犀川通船

犀川通船

犀川通船は、江戸時代後期に信濃川水系犀川で展開された水運事業です。天保3年（1832年）に、信濃国筑摩郡白板村の庄屋であった折井儀右衛門が江戸幕府の許可を得て開設しました。

概要

犀川通船は、松本と上水内郡信州新町を結ぶ約60キロの区間を、およそ7時間かけて下る航路でした。信州新町からは、長野盆地や上田方面へ馬によって荷が運ばれていました。しかし、明治35年（1903年）に篠ノ井線が開通すると水運は衰退し、犀川沿いの陸路が整備されると、その役目を終えました。

犀川での水運は、江戸時代末期から活発になりました。文献によると、犀川通船は天保3年（1832年）に開始されましたが、それ以前から北国西街道や千国街道の宿場の伝馬役、中馬業者からの強い反対があり、通船の願いが出てから実現まで94年もの年月を費やしました。

通船開始までの道のり

犀川通船開始に至るまで、幾度となく通船の嘆願が行われました。以下にその主な例を挙げます。

元文4年(1739)の通船願
延享4年(1747)～寛延元年の通船願
宝暦10年(1760)の通船願
安永6年(1767)の通船願
文政5年(1822)～天保3年(1832)の通船願

これらの嘆願は、宿場や中馬業者からの反対により、なかなか実現しませんでした。しかし、奉行の仲介による交渉の結果、天保3年1月28日に示談が成立し、ようやく通船が承認されました。この際、以下のような内容の規定書が取り交わされました。

宿継ぎ荷物や商人が購入した品物は、一切船積みしない。
往来の旅人、武士の荷物、御用荷物、懇意な者の荷物も、乗船させない。
通船品は、米穀類、酒、麦、長木材、長竹、石、土瓦など、宿方に支障がないものに限る。
宿場側は、通船川筋に見改所を設け、船荷を検査する。もし規定外の荷物が船積みされていた場合は、船荷を双方立ち合いのもとで焼き捨て、通船を停止する。

通船の工夫

儀右衛門は、犀川の水量が少ない時期や難所での航行を考慮し、近隣の川を視察しました。特に甲州富士川の航行方法を参考にし、同所から船大工や船頭を雇い入れました。また、船幅を狭く、船底を薄くし、弾力を持たせるなど、犀川の特性に合わせた船を建造しました。

脚注

参考文献

塚田正朋『長野県の歴史』山川出版社、1974年5月、古川貞雄執筆部分、176-177ページ

関連項目

* 中馬（街道運搬）

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