犬とジャッカル

犬とジャッカル：古代エジプトの知られざるボードゲーム

古代エジプトで楽しまれたボードゲーム「犬とジャッカル」。その正式名称は現代には伝わっておらず、テーベの墳墓から発見されたゲーム盤をもとに、考古学者ハワード・カーターによって名付けられました。現代では「猟犬とジャッカル」「ハウンドとジャッカル」など、いくつかの呼び名で知られています。「58ホールズ」という名称も用いられることがありますが、あまり一般的ではありません。

ゲーム盤は、29個の穴が2セット、計58個の穴で構成されています。そして、犬またはジャッカルの頭部を模した小さなスティックが10本、駒として使用されます。この独特のゲーム盤と駒は、紀元前2000年頃のエジプト中王国期に流行したと考えられており、その後の時代にも愛され続けました。

エジプト国内だけでなく、「犬とジャッカル」は地中海世界へと広まりました。メソポタミア文明やコーカサス地方でもこのゲームがプレイされていた証拠が見つかっています。さらに驚くべきことに、アゼルバイジャンのゴブスタン国立保護区にある、紀元前2千年紀の遊牧民の岩窟画にも、このゲームと思われる描写が確認されています。これは、このゲームが古代文明において、非常に広範囲にわたって楽しまれていたことを示唆しています。

ゲームのルールは、残念ながら完全に解明されていません。しかし、発見されたゲーム盤と駒から、戦略性と運の要素が組み合わさった、奥深いゲームであったことが推測されます。プレイヤーは、自分の駒を巧みに動かし、相手を出し抜くことで勝利を目指したのでしょう。

「犬とジャッカル」は、単なる娯楽を超えた意味を持っていた可能性があります。古代エジプトの人々にとって、犬とジャッカルは神聖な動物とされており、ゲームを通して、宗教的な儀式や信仰に関わっていたのかもしれません。あるいは、戦略的な思考力や、運を支配する能力を試す、一種の訓練として用いられていた可能性も考えられます。

現代においては、古代エジプト文明への関心の高まりとともに、「犬とジャッカル」への注目も集まっています。その歴史的背景や、他の地域への広がりは、古代文明の交流や文化の伝播を理解する上で貴重な手がかりとなります。この謎めいた古代ゲームを研究することで、私たちは過去の知恵や文化に触れ、より深く古代世界を理解することができるでしょう。今後の研究によって、より詳細なルールや、ゲームが持つ文化的・宗教的意義が解明されることが期待されます。

参考資料

* Hounds And Jackals- History and Useful Information (外部リンク)

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