ゴブスタン国立保護区

ゴブスタン国立保護区：アゼルバイジャンの歴史と自然の宝庫

アゼルバイジャンの首都バクーから南西へ位置するゴブスタン国立保護区は、1966年に国定史跡、そして2007年にはユネスコの世界遺産に登録された、歴史と自然が織りなす貴重な地域です。60万点以上とも言われる古代の岩絵群と、独特の景観を形成する泥火山は、この保護区の最大の魅力です。

60万点以上の古代岩絵：先史時代のメッセージ

保護区内には、数多くの岩絵が岩肌に刻まれています。これらの岩絵は、紀元前2万年～5千年前のものと推定されており、狩猟の様子、航海、儀式の舞踏、家畜、天体など、多様なモチーフが描かれています。岩絵は単なる絵画ではなく、当時の生活、信仰、社会構造を理解するための貴重な手がかりを提供しています。ノルウェーの著名な人類学者、トール・ヘイエルダールもこの地を訪れ、研究に携わったことで知られています。保存状態の良い岩絵からは、アシの舟で旅をする人々、レイヨウやスイギュウを狩る人々、そして踊る女性たちの姿が生き生きと再現されており、先史時代の生活を鮮やかに描き出しています。

泥火山の神秘：地球の息吹

ゴブスタンは、世界で約700ある泥火山のうち、400個以上が存在すると推定されている地域でもあります。泥火山とは、地下の泥が地表に噴出する現象で、ゴブスタンでは周期的に発生することが知られています。2001年には、バクー近郊で15メートルもの高さの炎を噴き上げる泥火山の噴火が世界的なニュースとなり、古代の宗教である拝火教（ゾロアスター教）の起源との関連も指摘されています。地元の人々の中には、泥火山から噴出した泥に薬効があると信じ、利用する人もいます。科学者たちも、この泥火山の研究に大きな関心を寄せています。

世界遺産登録：国際的な評価

ゴブスタン国立保護区の世界遺産登録への道のりは長く、1998年に暫定リストに登録された後、2004年の審査では登録見送りとなりました。しかし、更なる調査と準備を経て、2007年に「ゴブスタンの岩絵の文化的景観」として、世界遺産に登録されました。登録基準は「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠」です。

ゴブスタン国立保護区の意義

ゴブスタン国立保護区は、アゼルバイジャンの自然と歴史遺産のシンボルとして、国内外から多くの観光客を集めています。考古学、人類学、地学といった様々な分野の研究者にとっても、重要な研究対象であり、貴重なデータを提供し続けています。世界遺産としての国際的な評価も高く、その保護と活用は、未来への重要な課題となっています。保護区は、単なる観光地ではなく、人類の歴史と自然の神秘を学ぶことができる、かけがえのない場所なのです。バクーを訪れた際は、ぜひゴブスタン国立保護区を訪れて、太古のロマンと自然の驚異を体感してください。

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