犬笛 (小説)

犬笛

『犬笛』は、西村寿行が1976年に発表した長編小説で、初めは『娘よ、涯なき地に我を誘え』というタイトルで知られていました。この小説は、愛犬とその信頼を中心に置きながら、誘拐された娘を取り戻すための父親の奮闘を描いています。作品は、そのテーマやストーリーからすぐに人気を博し、後に映画化やテレビドラマ化もされるなど、多くの人に愛されています。

書かれた経緯

西村は、動物小説や社会派ミステリーを手がける作家であり、冒険小説の執筆を勧められたことを契機に、新たな作品に取り組みました。1975年には『君よ憤怒の河を渉れ』や『化石の荒野』といった冒険小説を発表。その流れで、1976年には『犬笛』となる作品を執筆し、動物との絆をテーマにした作品に仕上げました。原作は、同年4月に特別号として出版され、その後の単行本化が行われました。

1978年、作品は西村寿行選集に収録される際に『犬笛』に改題されました。さらに同年には、映画化も決定し、三船プロダクションが制作しました。これにより、犬を主人公とした冒険小説の先駆けともなりました。この作品のベストセラーにより、西村は1979年度の作家部門でトップに輝くことになります。

あらすじ

物語は、かつて狩猟を趣味にしていた秋津四郎という男性を中心に展開します。ある日、彼の娘である良子が謎の人物に誘拐されてしまいます。警察は捜査を進めますが思うようにはいかず、四郎は自らの手で娘を救出する決意を固めます。

彼は、良子が持っていたゴールトン・ホイッスル（犬笛）の音を頼りに、犬の鉄とともに追跡の旅に出発します。途中、四郎は、殺人事件の容疑者とされ、警察から逃れる中でさまざまな困難に直面します。長野から北海道、山陰から日本海と、幾度も死地をくぐり抜ける中で出会う人々に助けられながら、日本全土を敷き詰めるように旅をするのです。そして、彼は国際商社の陰謀を暴きながら、徐々に犯人に迫っていきます。

映像化の歴史

『犬笛』は、1976年に映画化が決定し、公開された映画は大ヒットを記録しました。その後も、1990年、2002年と、続けてテレビドラマ化が行われ、多くの俳優たちがこの物語のキャラクターを演じました。特に1978年版は、日本テレビ系で放送され、視聴者からの注目を集めました。このように、時を超えて幅広いメディアで取り上げられ続けた『犬笛』は、現代でもその影響を残しつつ、愛され続けています。

おわりに

西村寿行の『犬笛』は、単なる冒険小説に留まらず、愛や絆、信頼をテーマにした感動的なストーリーです。父親の愛情と犬との絆が織りなす物語は、今なお多くの読者や視聴者の心に響いています。

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