犯罪広告

『犯罪広告』

松本清張による短編小説『犯罪広告』は、「黒の様式」シリーズの一環として発表されました。この作品は1967年の『週刊朝日』で連載され、同年8月に短編集として刊行されました。また、1979年にはテレビドラマ化され、視聴者の関心を集めました。

あらすじ

物語は南紀の町を舞台に展開されます。この町に住む著名な人々の家に、相次いで殺人に関する告発広告が送り付けられます。広告の発信者は末永甚吉と名乗る人物で、彼は20年前に自らの母親の末永セイが池浦源作によって殺され、家の床下に埋められていると主張しています。甚吉は警察に訴えたものの、事件は既に時効を迎えているためこれ以上の法的措置を取ることが出来ません。彼は母の遺体を掘り起こすことを望み、源作に対して掘り起こすべきだと迫ります。

源作は甚吉の言い分を極めて狂気じみたものであると捉え、彼と会うことはないと考えます。しかし、町の中でこの告発広告が広まり、大きな関心を呼び起こしたため、警察署長は源作に対して床下を掘ることに合意させるための根回しを図ります。この時、町の人々も次第に事件に巻き込まれていき、様々な感情と炊きつく思惑が交錯するようになります。物語は、死体を巡る攻防の中で加わる様々な人間模様と、背後に隠された真実へと誘導されていきます。

エピソード

作中に登場するウミホタルについては、当時「黒の様式」シリーズの編集者であった重金敦之が水産学者の末広恭雄から取材を行い、その知見が取り入れられています。これにより、作品のリアリティが増し、読者は一層深く物語に引き込まれることでしょう。

テレビドラマ化

『犯罪広告』は1979年1月20日にテレビ朝日系列の「土曜ワイド劇場」にて放送され、視聴率は17.3％を記録しました。キャストには、檀ふみ、田村亮、そして小倉一郎などが名を連ね、物語に厚みを与えました。演出は水川淳三が手掛け、脚本は吉田剛によって綴られました。音楽を担当した津島利章の楽曲も、物語の緊迫感を巧みに表現しています。制作は松竹とテレビ朝日によるもので、作品の完成度を高めるため多くのスタッフが関与しました。

このように、『犯罪広告』は松本清張の卓越したストーリーテリングと人間心理の洞察が織りなす、記憶に残る作品です。

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