狩勝実験線

狩勝実験線の概要

狩勝実験線（かりかちじっけんせん）は、かつて日本国有[[鉄道]]（国鉄）が運営していた実験線で、根室本線の新内駅から新得駅にかけての廃線を活用していました。この路線は、急勾配と急曲線の多い狩勝峠を通り抜ける必要があり、蒸気機関車の煤煙が輸送の妨げとなっていました。それを解決するために、新狩勝トンネルを含む新線が建設され、1966年（昭和41年）9月30日に運行が切り替えられました。新内駅とその周辺の旧線は営業を停止されましたが、新内から新得までの区間は実験線として再活用されることになりました。

実験の背景と目的

狩勝峠での脱線事故の頻発を受けて、実験線では事故原因の解明と、鉄道車両の挙動を詳しく研究するための実験が行われました。無人の実験列車が運営され、その実験では実際に脱線を起こさせることが目的とされました。新得側から機関車が牽引する形で実験列車が新内側に向かい下り勾配を利用して脱線を試みるという実験が行われ、種類の異なる列車編成で実験が行われました。

実験手法

実験列車の先頭にはマヤ40形制御車が連結され、無線を用いてブレーキ操作、連結器の解放、データの測定や送信を行いました。1969年7月1日に実施された一例では、貨車9両と測定車2両がディーゼル機関車2両によって挟まれ、峠を下っていく中で機関車のブレーキ制御を使用して貨車列を圧縮状態にし、脱線を引き起こす条件を分析する研究が行われました。また、特殊に設計されたレール部分も通過し、後続の車両がどのように挙動するかがマヤ40形のカメラで詳細に記録されました。

安全対策とその他の実験

新得駅前には万が一の脱線に備えた安全側線も設けられ、営業線への実験車両の侵入を防止するための打子式トレインストッパーが設置されました。営業列車に与える影響を考慮し、実験線との分岐部は特殊ポイントが用いられ、徐行することなくスムーズに進入できる仕様になっていました。脱線実験後も、車両火災の実験や振り子式車両、台車の研究、橋梁のたわみ実験など多岐にわたる研究が行われ、貴重なデータが得られました。

廃止とその後

狩勝実験線は1979年（昭和54年）に廃止され、線路は撤去されました。その後、新内駅から新得駅までの区間の多くは遊歩道として整備され、旧線の歴史的な橋台なども残されています。また、無線実験で使用された通信設備も当時のままで残されています。

エピソード

実験中、近隣の農家のテレビ放送に障害が発生したことがありましたが、その農家は実験に協力的であり、「昼の1時間と、夕方5時以降だけテレビを見られればよい」とのことでした。この協力により、実験をスムーズに進めることができ、関与した京谷好泰はこの経験をもとに、リニア実験線の建設にあたって人口密集地を避けることを希望し、宮崎県での建設につながったとされます。

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