狩野明男

狩野 明男（かのう あきお）

狩野明男は、昭和から平成にかけて日本の政界で活動した政治家（1934年10月2日 - 1992年2月26日）です。衆議院議員を2期、参議院議員を1期務め、教育や法務など多岐にわたる分野でその手腕を発揮しました。選挙に際しては、「かのう 明男」という独自の表記を用いることもありました。

若き日々から政界へ

1934年、神奈川県三浦郡葉山町に生まれ、茨城県新治郡志士庫村（現在の、かすみがうら市の一部）で育ちました。幼少期には厳しい試練に見舞われ、小学2年生の時に父をニューギニアでの戦いで亡くし、さらに小学6年生の時には母も逝去するという悲劇を経験します。残された3人の兄弟と共に、それぞれ親戚に引き取られて育ちました。

荏原中学校を経て、茨城県立土浦第一高等学校に進学。その後、慶應義塾大学法学部で学び、1958年に卒業しました。大学卒業後は故郷の茨城に戻り、農業に従事した後、酒造会社や自動車販売会社の経営に携わり、実業界での経験を積みました。

国政への挑戦と活動

地方政治への関心から、1972年に水戸市長選挙に立候補しますが、この時は当選に至りませんでした。その後、国政を目指し、1976年の衆議院議員総選挙に旧茨城1区から挑戦しますが、再び落選の苦杯を嘗めます。しかし、諦めることなく、1979年の第35回衆議院議員総選挙で初当選を果たし、続く1980年の総選挙でも当選し、衆議院議員を2期務めました。衆議院議員時代は文教委員会に所属し、特に教科書無償配布制度の維持・拡充に力を尽くしました。また、国際社会に開かれた教育の実現を目指し、外国人教員に関する法律の成立にも貢献し、その提案理由の説明や質疑応答において積極的に役割を果たしました。

1983年の衆議院議員総選挙で一度落選しますが、その後参議院へ活動の場を移します。1986年の参議院議員通常選挙では落選するも、1989年の第15回参議院議員通常選挙で茨城県選挙区から当選し、参議院議員として1期務めました。参議院時代には、各種委員会で中小企業が抱える問題や都市部の通勤対策など、生活に密着した課題を精力的に取り上げました。また、1990年には第2次海部内閣で法務政務次官に就任。この立場で、商法の一部改正や借地借家法の改正実現に尽力し、法整備に貢献しました。

人柄と社会活動

政治活動の傍ら、多方面での活動にも積極的に取り組みました。父を戦争で亡くした経験から、遺族会活動に深く関わり、慰霊団の団長として国内外の戦跡を訪問し、慰霊事業を進めました。また、福祉問題にも強い関心を寄せ、国会議員として初めて点字を用いた名刺を作成したことでも知られています。個人的な善行として、招待された結婚式の謝礼を、新郎新婦に代わって福祉施設に密かに寄付したという心温まるエピソードも残されています。

所属政党である自由民主党では、国民運動本部副本部長や、文教部会、交通部会のそれぞれで副部会長といった要職を歴任しました。

スポーツマンとして

政治家として多忙な日々を送る中で、狩野氏はスポーツをこよなく愛しました。特に合気道は五段の腕前を持ち、日々の健康維持のため、毎朝6キロメートルのジョギングを欠かさず行っていました。また、衆議院議員時代には、市民マラソン大会として知られる青梅マラソンにも参加するなど、その健脚ぶりを発揮しました。

死去と追贈

1992年2月26日、心不全のため、東京都港区の虎の門病院で57歳でその生涯を閉じました。その功績に対し、死去と同日付で特旨をもって正五位に叙され、勲三等旭日中綬章が追贈されました。同年3月11日には、参議院本会議において峯山昭範氏による追悼演説が行われ、その人となりと政治家としての歩みが偲ばれました。

狩野明男氏の死去に伴う参議院議員の欠員補充のため、同年4月12日に補欠選挙が実施され、妻の狩野安氏が後継候補として立候補し、当選を果たしました。

家族と著書

家族としては、後に参議院議員となった妻の狩野安氏、そして茨城県議会議員を務めた長男の狩野岳也氏がいます。また、祖父に志士庫村村長を務めた狩野義胤氏、母方の祖父に栃木県選出の貴族院議員であった矢口長右衛門氏を持つなど、代々地域や国政に携わってきた家系の出身でした。

主な著書に、「新しい政治を求めて」シリーズや、米大統領選挙視察の記録、中国に関する著書などがあります。また、没後には遺稿集「早春賦」が出版されています。

狩野明男氏は、若くして逆境を乗り越え、実業界を経て政界に進出。衆参両院で教育、法務、中小企業、福祉など幅広い分野で政策実現に尽力し、国民生活の向上に貢献した政治家として、その名を残しています。

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