狩野雅楽助

狩野雅楽助について

狩野雅楽助（かのううたのすけ、文亀年間（1501-03年）? - 天文8-10年（1539-41年）?）は、室町時代後期に活躍した狩野派の画家です。彼は狩野正信の次男であり、狩野元信の弟でもあります。雅楽助の本名は之信（ゆきのぶ）とされ、雅楽助は通称として用いられています。また、彼の号には「輞隠（もういん）」というものもあります。

生涯と業績

雅楽助に関する史料は、主に江戸時代初期に編纂された画史・画伝が中心であり、例えば『弁玉集』や『丹青若木集』、『本朝画史』などで言及されています。これらの資料からは、彼が狩野派の重要な画人であったことがうかがえます。しかし、詳細な記述は限られており、生没年については異なる説が存在します。

一つは『画事備考』によるもので、天正3年（1575年）に63歳で亡くなったとの説ですが、これは父である正信が80歳の頃の子どもであるため、現実性に欠けると言われています。もう一つの『画工譜略』の説では、雅楽助は文亀年中に39歳で亡くなったとされますが、これに従うと兄元信よりも年上になるため疑問が残ります。美術史家の松木寛は、『画工譜略』における書き落としの可能性を指摘し、雅楽助は正信が70歳近くになってから生まれた可能性が高いと考えています。

これらの議論から、雅楽助は親子ほど年が離れた兄弟であり、元信から画を学んだと考えられています。また、彼の画風は元信と似ており、特に甥の狩野松栄に好影響を与えたともされています。

画風と作品

雅楽助のスタイルは『本朝画史』で「風格高挙、気韻粛爽」と評される一方で、老成に欠けるとされていました。晩年の作品として評価される「松に鴛鴦図屏風」（ボストン美術館蔵）には、前景に重きを置いた構図や、流れるような松の動感が見られ、後の狩野永徳に受け継がれる要素が伺えます。これにより、雅楽助の作品は後の安土桃山時代の豪華な障壁画へと繋がる過渡期を象徴しています。

現存する雅楽助の作品は10数点ですが、彼の印「之信」や「輞隠」を持つものもあります。ただし、これらの作品にはモチーフの硬直化や様式の変化が見受けられ、幻想的な表現は雅楽助の子、之季などの後継者によるものと考えられています。また、川越・喜多院にある『職人尽図屏風』（重要文化財）の作者である狩野吉信は、雅楽助の孫であるとされています。

結論

狩野雅楽助は、狩野派の大きな系譜の中で重要な役割を果たした画家であり、彼の作品や画風は多くの後世の画家たちへと影響を与えてきました。その多様性と独自性は、今後の研究においても興味深いテーマとなるでしょう。

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