本朝画史

本朝画史：日本絵画史を彩る画人たちの記録

『本朝画史』は、日本絵画史において極めて重要な役割を果たす画人伝です。延宝6年（1678年）、狩野永納によって編纂され、以来、日本絵画研究の基礎資料として広く活用されてきました。5巻5冊からなる本書は、単なる画家のリストではなく、各画家の生涯、作品、画風、そして日本絵画の歴史的流れを詳細に記述した、まさに百科事典と言える存在です。

狩野家による絵画史の編纂

狩野永納は、名門狩野派の絵師として知られています。彼は、父である狩野山雪が作成した「本朝画人略伝」を基に、『本朝画史』を完成させました。単独での執筆ではなく、儒医である黒川道祐の協力を得ながら、綿密な調査と編集作業を進めたことが伺えます。延宝6年の刊行に際しては、林鵞峰が序文を寄せており、当時の文化人からの高い評価がうかがえます。

405人の画人を網羅した内容

『本朝画史』は、実に405人もの画家の情報を収録しています。その内容は、単なる人物紹介にとどまらず、絵画史全体を俯瞰した構成となっています。

巻一: 絵画の起源、画家の地位、絵画制作の場、絵画の研究方法、絵画の流行、画家の画風、絵画の主題など、絵画に関する基礎知識を解説しています。
巻二: 古代から中世にかけて活躍した147人の画家の伝記が収められています。
巻三: 中世の代表的な画家の作品と160人の画家の伝記を記しています。
巻四: 特定の専門分野を持つ24人の画家と、狩野家の画法について詳述しています。
* 巻五: その他の46人の画家の伝記と、28人の画家の補遺、絵筆や絵の具などの画材について記述しています。

さらに、多くの版本では「本朝画印」と呼ばれる図版が巻頭に、あるいは巻末に収録されています。これは、絵画における様々な印章を収録したもので、絵画作品鑑定においても重要な資料となります。

多様な版本と研究の深化

『本朝画史』は、初版刊行後も、元禄6年（1693年）に改訂版が刊行されるなど、時代を経て様々な版本が制作されてきました。その中には、檜山義慎が『本朝画史』の遺漏を補って編纂した『続本朝画史』を合冊した版本も存在します。

近年では、1985年に笠井昌昭氏らによる詳細な研究成果を加えた『訳註本朝画史』が出版され、現代の研究者にも広く利用できるようになりました。これらの研究を通して、『本朝画史』は単なる歴史資料にとどまらず、現代の日本絵画研究に重要な知見を提供し続けています。

結論

『本朝画史』は、狩野永納の綿密な調査と編集によって生まれた、日本絵画史を理解する上で欠かせない貴重な文献です。405人の画家の事績を網羅したその内容は、絵画技法から画家の系譜、作品に至るまで、多角的な視点から日本絵画の歴史を紐解くことを可能にします。現在でも多くの研究者によって研究され、その価値は時代を超えて受け継がれています。

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