独り芝居の道化師

『独り芝居の道化師』について

『独り芝居の道化師』（原題：Script for a Jester's Tear）は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンドであるマリリオンの初のスタジオアルバムとして、1983年に発表されました。この作品は、バンドの音楽的なスタイルとその後のキャリアの基盤を築く重要な一歩となりました。

アルバムの背景

バンドはデビューシングル「マーケット・スクエア・ヒーローズ」でまず注目を集めましたが、このシングルはデヴィッド・ヒッチコックがプロデュース。しかしながら、彼が卒業したことが影響し、EMIレコードは新たにより現代的なプロデューサーを起用することを決定しました。その結果、ニック・タウバーがこのアルバムのプロデューサーに抜擢され、シン・リジィやToyahなどの作品で知られるタウバーは、マリリオンの音楽に新たな息吹を吹き込みました。

収録曲には、バンドの初期メンバーであるディズ・ミニット（ベース）、ブライアン・ジェリマン（キーボード）が脱退する前に関与したものも含まれています。ジャケットアートは、マーク・ウィルキンソンが手がけており、彼はこの作品を「ゴミゴミした部屋の中で成功を目指す孤独なソングライター」というテーマで表現しています。このビジュアルはアルバムの雰囲気を象徴しており、続くアルバムで発表される楽曲のインスピレーションともなりました。

特に、次作となる『破滅の形容詞』では、「パンチ・アンド・ジュディ」や「彼女はカメレオン」といった楽曲が、ジャケットのモチーフからインスパイアを受けたと言われています。イギリス国内では、ジャケットを使用したピクチャー・ディスクのLPもリリースされ、ファンの間で話題を呼びました。

反響と評価

『独り芝居の道化師』は、1983年3月26日付の全英アルバムチャートで初登場7位を記録し、31週間もチャートに残るヒットとなりました。このアルバムからのシングル「ヒー・ノウズ、ユー・ノウ」は全英シングルチャートで35位を達成したほか、続く「ガーデン・パーティ」は16位にランクインするなど、商業的にも成功を収めました。

また、スウェーデンのアルバムチャートで42位、アメリカのBillboard 200では175位を記録し、シングル「ヒー・ノウズ、ユー・ノウ」はメインストリーム・ロック・チャートで21位に到達しました。これらの結果は、バンドの存在感を高め、プログレッシブ・ロックにおける地位を確立するのに寄与しました。

オールミュージックのレビュアーであるジョン・フランクは、本作に5点満点中4.5点をつけ、その評価を「過剰とも言えるほど難解で複雑でシアトリカル」とし、マリリオンの最高傑作としての位置付けを強調しました。彼は、後のアルバムの基準となる作品と述べ、その影響力の大きさを称賛しました。

収録楽曲一覧

アルバムには以下のような楽曲が収められています。すべて特記のない楽曲は、フィッシュや他のメンバーによって共作されています。

1. 独り芝居の道化師 - 8:39
2. ヒー・ノウズ、ユー・ノウ - 5:22
3. ザ・ウエブ - 8:48
4. ガーデン・パーティ - 7:15
5. チェルシー・マンデイ - 8:16
6. 忘れ去られた子供たち - 8:21

また、1997年にリリースされたリマスターCDにはボーナス・トラックも含まれており、当時の未発表曲やデモバージョンも楽しむことができます。

参加ミュージシャン

本作の主要メンバーは以下の通りです。

• - フィッシュ - ボーカル
• - スティーヴ・ロザリー - ギター
• - マーク・ケリー - キーボード
• - ピート・トレワヴァス - ベース
• - ミック・ポインター - ドラムス、パーカッション

このアルバムは、マリリオンにとって重要な出発点であり、彼らの音楽的な旅の中で特別な位置を占めています。プログレッシブ・ロックファンにとっては、聴く価値のある名盤です。

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