猪子止戈之助

猪子止戈之助（いのこ しかのすけ）

猪子止戈之助は1860年5月24日、但馬国豊岡藩の家老の子として生まれました。彼は日本の外科医療の発展に多大な貢献をし、特に明治期から昭和初期にかけて活躍しました。彼は京都帝国大学医科大学の名誉教授であり、その附属病院の初代院長を務めたほか、日本で最初に喉頭癌の手術を成功させた外科医として知られています。可憐な経歴を持つ猪子の人生は、医学の進歩と彼自身の努力の象徴です。

生涯

猪子は1860年6月に兵庫県豊岡市で誕生しました。若い頃から教育を受け、藩校に入学したのち、1873年には東京外国語学校に進学します。そのわずか1年後に東京医学校に転校し、1882年に東京大学医学部を卒業しました。彼の同級生には著名な医学者たちが名を連ねています。

卒業後の1882年5月、猪子は京都府立医学校で教鞭を執ることになり、さらに1887年にはその校長に就任します。そして翌年、彼は日本初の喉頭癌全剔出手術に成功します。これにより、彼は外科医としての名声を確立しました。

1891年には第三高等中学校（後の京都帝国大学）で教授職に就き、当時の情報源からは、1891年の大津事件において負傷したロシア皇太子ニコライ2世を治療したという逸話も残されています。その後1892年にはドイツに留学し、帰国後も教育と医療の発展に努めました。1895年には日本初の胃切除手術を行い、医療界に革命を起こしました。

さらに、彼は京都に官立医科大学設立に貢献し、1899年には京都帝国大学医科大学が創立され、初代の外科学第一講座教授に任命されました。そして、同年12月には医学博士号を取得しました。彼は外科医療の専門性を磨くために、再度ドイツへの渡欧を果たしました。

1921年、猪子は京都帝国大学を退官し、その名誉教授となり、晩年まで医学の発展に向けた教育活動を続けました。彼の生涯は1944年1月31日に幕を閉じましたが、彼の業績は今でも広く認知されています。

栄典と業績

猪子はその生涯で多くの栄典を受けています。位階としては1891年に従六位に叙位され、その後も正六位、従五位、正五位、従四位、正四位、そして正三位へと昇進しました。また、勲章においても、1901年には勲五等瑞宝章、1905年には勲四等瑞宝章、さらに1909年には勲三等瑞宝章を受けるなど、その功績は公式に認められました。

著作

猪子は学問への貢献としても知られ、「生理及衛生 中学教科」（1901年）や「校友会雑誌」における臨床講義など、多数の論文や著作を残しました。これらの業績は彼の医学的な見識と教育への情熱を示しています。

親族

彼の家族は医学界での成功を収めた者が多く、妹の猪子ふては男爵沖野忠雄の妻でもあり、弟の猪子吉人は医学博士として活躍しました。長男の猪子一到は実業家として知られ、また彼の娘はそれぞれ病理学者と精神医学者の夫を持つなど、猪子家は多岐にわたる分野で影響を及ぼしました。猪子止戈之助の人生は、彼が医療の発展に貢献しただけでなく、家族にもその影響が色濃く残っていることを物語っています。

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