猫鼻温泉

猫鼻温泉：幻の湯と再起の物語

猫鼻温泉は、長野県北安曇郡小谷村、その名も「猫鼻」という地域に位置していた温泉です。その名の由来は、もちろんこのユニークな地名から来ています。

泉質と温泉地の様子

泉質は炭酸水素塩泉で、中性低張性高温泉に分類されます。揚湯当時は単純泉として知られていました。泉温は45℃と、湯浴みに適した温度です。

営業当時は、一度に200人もの入浴が可能な広々とした露天風呂が自慢でした。冬にはスキー帰りの人々で賑わい、活気に満ち溢れていたそうです。内湯は木造の小屋に設けられ、脱衣所はプレハブ2棟という、簡素ながらも温かみのある造りでした。

歴史：自然湧出から水害、そして移転へ

古くから自然湧出していた猫鼻温泉ですが、交通の便が悪かったため、長らくの間、手つかずの野湯の状態でした。しかし、近くに道路が開通することになり、白馬村の清水英雄氏によってボーリング調査が実施されました。

その結果、1989年（平成元年）8月には、毎分400リットルもの豊富な単純泉の湧出に成功しました。1993年（平成5年）の時点では露天風呂も存在していましたが、その後所有者が変わり、国道工事の終了後に正式な温泉施設として整備される予定でした。

しかし、1995年（平成7年）7月、悲劇が起こります。7.11水害により温泉施設は壊滅的な被害を受け、基礎の半分以上が流出してしまいました。さらに、元々源泉が老化していたことも重なり、再建されることなく、その姿を消してしまったのです。現在、猫鼻温泉に通じる道は閉鎖されており、通行止めとなっています。

幻となってしまった猫鼻温泉ですが、その灯は消えませんでした。後に温泉施設は湯原地区へ移転し、新たな地で『湯原温泉 猫鼻の湯』として営業を再開したのです。

周辺情報

猫鼻温泉の周辺には、豊かな自然や歴史的なスポットが点在しています。

姫川: 温泉の近くを流れる清流。美しい景観が楽しめます。
猫鼻石仏群: この地域独特の石仏群。歴史を感じさせる佇まいです。
塩の道（千国街道）: かつて塩を運んだ道。歴史散策に最適です。
蒲原温泉、姫川温泉: 近隣の温泉地。湯めぐりも楽しめます。
国界橋: 歴史的な橋。周辺の景観と調和しています。

関連項目

温泉
温泉街
外湯
温泉番付
日本の温泉地一覧


猫鼻温泉は、その短い歴史の中で、自然の恵みと災害の脅威、そして人々の努力と再起の物語を刻みました。今はもうその場所で湯に浸かることはできませんが、その名は、人々の記憶の中に残り続けるでしょう。

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