猿渡寛茂

猿渡 寛茂

福岡県田川市出身、1949年4月28日生まれの元プロ野球選手（内野手）、そして指導者。

高校は、名将・原貢監督のもと強豪校へと変貌を遂げた三池工業高校に進学。1年時の1965年には、1年先輩のエース上田卓三投手を擁し、夏の甲子園に初出場ながら初優勝という快挙を達成しましたが、猿渡自身は残念ながらベンチ入りを果たせませんでした。2年となった1966年にはチームの主将を務め、秋季九州大会で準決勝まで進出するも鎮西高校にコールド負けを喫し、翌春のセンバツ出場を逃しました。同期には、後にプロでもチームメイトとなる相本和則選手がいました。

高校卒業後は社会人の三菱重工長崎に入社。ここでは俊足とパンチ力ある打撃を兼ね備え、レギュラーの4番打者として活躍し、チームに貢献しました。入社2年目の1969年には、40試合に出場し、打率.330、14本塁打という好成績をマーク。この活躍が認められ、同年のドラフト会議で東映フライヤーズから5位指名を受け入団。当時の田宮謙次郎監督からは、「2、3年後にはレギュラーを狙える」と期待されました。

プロ入り1年目の1970年は、10月3日の西鉄戦（後楽園）でプロ初出場、10月18日の阪急戦（西宮）では初めてスタメン出場を果たしましたが、一軍では7打数無安打に終わりました。二軍でも打率.223、1本塁打と、期待に応えることはできませんでした。2年目の1971年は一軍出場がなく、苦しい時期を過ごしましたが、二軍では打率.280台、3本塁打とチームトップクラスの成績を残し、イースタン・リーグの打撃ベストテンに食い込みます。3年目の1972年にはジュニアオールスターに出場するなど、球団から育成選手として期待されていましたが、社会人時代に見せた打撃力は影を潜め、主に守備固めとして起用されるようになります。

球団が日拓に買収された1973年には、9月11日の南海戦（大阪）で山内新一投手から待望のプロ初安打を記録。さらに球団が日本ハムに買収された1974年からは、代打として活路を見出しブレイク。30試合に出場し、打率.286と成長した姿を見せ、9月14日の近鉄戦（後楽園）では板東里視投手からプロ初打点を記録しました。1975年には結婚し、静岡県伊東市に新居を構えます。自宅には夫人と、近所で釣具店を営む夫人の母親も同居しており、月々のローン返済もあったため、本拠地の後楽園で試合がある際は伊東から電車で毎日通勤していました。終電に間に合わない時は、北区王子に住んでいた夫人の兄の家に泊めてもらうなど、プロ野球選手としては珍しい生活スタイルとして注目され、週刊現代の記者が取材に訪れたこともあったといいます。こうした状況下で、この年は自己最多となる56試合に出場。内野の準レギュラーや代打として打率3割を記録するなど存在感を示しましたが、1976年以降は出場機会が減少し、1977年に現役を引退しました。

現役引退後は、野球に対する熱心さが評価され、指導者としての道を歩むことになります。日本ハム（1979年〜1984年 二軍守備コーチ、1987年〜1988年 一軍守備・走塁コーチ、1989年〜1990年、1995年〜1998年 二軍内野守備・走塁コーチ、1991年 二軍内野守備コーチ→1992年〜1994年 一軍内野守備・走塁コーチ、1999年 二軍総合内野守備・走塁コーチ→2000年〜2001年 一軍内野守備コーチ）、ヤクルト（1985年 一軍内野守備・走塁コーチ→1986年 一軍内野守備コーチ、2003年〜2006年 二軍守備・走塁コーチ→2007年 二軍育成コーチ→2008年〜2010年 二軍監督）といったプロ球団で長年コーチや監督を歴任しました。シーズン中は合宿所に泊まり込みで指導に当たり、週末やシーズンオフには伊東の自宅に帰り、正月用の飾りや注連縄を自作して毎年地元の寺に奉納していたといいます。

指導者としては、厳しい練習で知られ、必ずしも守備の上手くない選手を、実戦で通用するレベルまで引き上げた手腕に定評がありました。日本ハム時代には、田中幸雄選手をマンツーマン指導でその才能を開花させ、リーグを代表する遊撃手へと育て上げ、古城茂幸選手も熱心な指導のもと成長しました。ヤクルトの二軍監督に就任した初年度の2008年には、それまでの厳しい指導スタイルから、選手の自主性を重んじる指導方針へと転換。これが功を奏し、チームを10年ぶりのイースタン・リーグ優勝に導きました。プロ球界を離れた2011年には、独立リーグであるBCリーグの信濃グランセローズで総合兼守備・走塁コーチに就任し、2012年まで務めました。

記録

初出場：1970年10月3日、対西鉄ライオンズ24回戦（後楽園球場）、9回表に三塁手として出場
初先発出場：1970年10月18日、対阪急ブレーブス24回戦（阪急西宮球場）、8番・三塁手として先発出場
初安打：1973年9月11日、対南海ホークス後期7回戦（大阪スタヂアム）、7回表に山内新一から
初打点：1974年9月14日、対近鉄バファローズ後期9回戦（後楽園球場）、6回裏に板東里視から

※ 東映（東映フライヤーズ）は、1973年に日拓（日拓ホームフライヤーズ）、1974年に日本ハム（日本ハムファイターズ）に球団名を変更。

背番号

56 （1970年 - 1973年）
35 （1974年 - 1977年）
73 （1979年 - 1984年）
87 （1985年 - 2001年、2011年 - 2012年）
* 89 （2003年 - 2010年）

もう一度検索