獅子窟寺

獅子窟寺（ししくつじ）

獅子窟寺は、大阪府交野市に位置する高野山真言宗の寺院で、その山号は普見山です。寺の本尊は薬師如来であり、寺院は生駒山塊の普見山中にあります。この地域の特異な地形には、寺号の由来ともなる獅子が吼える形の岩が存在し、訪れる人々に神秘的な印象を与えています。

歴史

この寺院の創建は古く、文武天皇の時代に遡ります。役行者によって開かれ、その後聖武天皇の命により行基が「金剛般若窟」として堂を設立したと伝えられています。平安時代には、ここが葛城修験の山岳霊場として重要な役割を果たしていたことが記録に残っています。特に、侍従である静仁法親王が詠んだ詩が『新後撰和歌集』に収められており、獅子窟寺は文学的にも評価されています。鎌倉時代に一時衰退しましたが、14世紀には亀山上皇の支援で復興しました。

しかし、元和元年（1615年）には焼き討ちに遭い、全山の十二院が焼失しました。この焼失の背景には、大坂夏の陣の際に寺院が豊臣方への協力を拒否したことが関係しています。現存する薬師如来像は、塔頭吉祥院の法師の尽力で難を逃れ、大和国に一時避難していました。寛永年間には和泉国槇尾山寺の支援を受けて再興され、現在の姿となりました。獅子窟寺は、交野八景「獅子窟の青嵐」にも選ばれており、多くの人々に親しまれています。

境内

獅子窟寺の境内には、さまざまな建物が存在しており、訪問者に多様な文化財を楽しむことができます。主要な構造物には以下があります。

• - 本堂（瑠璃殿）: 寺院の中心であり、信仰の場です。
• - 地蔵堂: 地蔵菩薩を祀る堂。
• - 鐘楼跡: かつての鐘楼の位置を示す部分。
• - 経蔵: 経典を保存するための場所。
• - 庫裏: 僧侶たちのための居住空間。
• - 薬師堂: 国宝である薬師如来像が収められている。
• - 王の墓: 亀山上皇及びその皇后の墓とされる2基が存在します。
• - 仁王門跡: 基壇が残っている場所もあり、かつての壮大さが伺えます。

さらに、境内には多くの巨石や岩などがあります。特に「獅子の岩」や「観音岩」、「男岩」などは、空海が修行を行った場所ともされています。これらの巨石は、修験道の歴史と自然の神秘が交わる場所となり、信者や観光客に深いメッセージを伝えているのです。

文化財

獅子窟寺には、数多くの文化財が保管されています。その中でも特に重要なのが、国宝に指定されている木造薬師如来坐像です。この像は1968年に国宝として認定され、9世紀に作られたと考えられています。像高は92.3センチメートルで、カヤ材の一木から彫刻されたものです。その制作技法は唐代の影響を受けており、天平時代の仏像彫刻の古典的形式を踏襲しています。

薬師如来像は、右手を胸前に上げて施無畏印を結び、左手は膝上までではなく胸前に位置して宝珠を捧げる形をとっています。この姿勢から、仏教の教えや信仰が強く反映されているといえます。像の右腕の一部や手首とその持物には後の補修が施されており、その誕生の秘密を秘めています。

アクセス

獅子窟寺へのアクセスは、京阪交野線の私市駅から徒歩で約60分です。自然豊かな道を通りながら、訪れる者を惹き込む雰囲気を持つ場所となっています。自然の中で深い文化的体験ができる獅子窟寺は、歴史と自然が融合した魅力的なスポットです。

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