新後撰和歌集

『新後撰和歌集』（しんごせんわかしゅう）は、鎌倉時代の正安三年（1301年）に編纂が開始され、嘉元元年（1303年）に完成した後宇多院の院宣による勅撰和歌集です。日本の勅撰和歌集としては、十三番目に位置づけられます。

この歌集は全二十巻から構成されており、収録されている歌数は1612首とされていますが、伝わる写本によって多少の異同が見られます。撰者は当時の有力歌人である二条為世が務めました。

本歌集の編纂過程で特筆すべき点は、勅撰和歌集としては初めて複数の歌人が協力して編纂にあたる「連署（れんしょ）」という役職が設けられたことです。連署には、撰者である二条為世の近親者や歌壇の重鎮たちが選ばれ、具体的には二条為藤、二条定為、長舜、津守国冬、津守国道といった面々が名を連ねています。これは、当時の歌壇における様々な系統や勢力の意見を調整し、編纂を進めるための措置であったと考えられています。

編纂の開始は正安三年（1301年）十二月二十三日、後宇多院から二条為世に対し勅撰和歌集の撰進を命じる院宣が下されたことに始まります。その後、約二年間の編纂作業を経て、嘉元元年（1303年）十二月二十九日に完成し、後宇多院に奏覧されました。

歌集の部立は、四季の歌として春（上下）、夏、秋（上下）、冬が置かれています。その他の部立としては、離別歌、羈旅歌（旅中の歌）、釈教歌（仏や仏道に関する歌）、神祇歌（神々や神社に関する歌）があります。特に恋歌は、恋（一）から恋（六）まで、六巻にわたって収録されている点が特徴的で、これは過去の勅撰集である『後撰和歌集』の構成を取り入れたものです。また、悲しみを詠んだ哀傷歌を雑部の下の巻（雑下）にまとめて収める構成は、『続後撰和歌集』に倣ったものとされています。雑部にはその他にも、雑上・雑中の巻があり、広い範囲の題材を扱います。最後に、祝いの歌である賀歌が収められています。

収録されている歌人の中で、多くの歌が選ばれている代表的な歌人には、藤原定家（三十二首）、その子である藤原為家（二十八首）、孫にあたる藤原為氏（二十八首）といった、撰者である二条為世と血縁関係にある二条家の歌人たちが挙げられます。その他にも、当時の有力な公卿である西園寺実兼（二十七首）や、院政期の中心人物であった後嵯峨院（二十五首）、亀山院（二十五首）といった皇族・上皇の歌も多く見られます。

歌風については、同時代の京極派による勅撰集、例えば『玉葉和歌集』や『風雅和歌集』などが清新さや情趣表現を追求したのに対し、『新後撰和歌集』に収められた歌は、伝統的な歌語や表現技法に則ったものが多く、比較的平穏で穏健な傾向が強いとされます。そのため、新しさに欠け、陳腐であると評されることも少なくありませんでした。

なお、本歌集には『津守集』という別称があります。これは、連署の一人であり、摂津国住吉社の社家であった津守国冬や、その一族の歌が比較的多く収録されていることに由来するものと考えられています。

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