玉城朝薫の墓
玉城朝薫の墓
玉城朝薫の墓（たまぐすくちょうくんのはか）は、沖縄県浦添市前田に位置した歴史的な遺跡で、組踊の祖として名高い玉城親方朝薫を含む向氏辺土名殿内の歴代墓です。この墓は浦添市によって史跡に指定されています。
墓の構造と特徴
この墓は、玉城朝薫個人のものではなく、家族墓の一部として位置付けられています。もともと、辺土名殿内は琉球王国末期に国頭間切（現在の国頭村）で脇地頭を務めた名家でしたが、朝薫の生存期間中には玉城間切（現南城市玉城地区）の総地頭職に就いていました。
墓の形状は亀甲墓の祖型として非常に特異です。その屋根は戦災によって消失しましたが、幸運にも戦前の写真からその形状が亀甲形ではなく、羽地朝秀の墓と同様にかまぼこ型であることが確認されています。墓室の正面左右には袖石が配置されており、これも亀甲墓とは異なり、緩やかな弧を描く形で広がっています。墓口前には供物台となるサンミデーが設置されており、その先には墓庭を取り囲むように設けられた縁石があり、全体に撥（ばち）のような形です。
墓庭は一段高く設定され、その先には石段が存在したと考えられていますが、こちらも戦災によって失われてしまいました。それに加え、袖石の外側には低い石垣があるものの、戦争の影響で部分的に欠落しています。墓庭外には石碑の台座の跡が見受けられますが、碑身は失われたままとなっています。
墓室の詳細
墓室内部は約4畳半の広さ（幅2.39メートル、奥行き2.73メートル）で、壁は琉球石灰岩を使った相方積みの石壁で構成されています。他の多くの墓とは異なり、漆喰の仕上げは施されていません。室内には四本の石柱が設置されており、天井を支える構造は摩文仁家の墓と同様に珍しいものです。天井石版は「ニービの骨」と呼ばれる細粒砂岩でできています。正面奥には石棚があり、そこには玉城朝薫の厨子甕が置かれていました。更にその奥には小さな玄室があり、遺骨が納められています。
厨子甕は、合計で24〜25基確認されていますが、戦災により一部が破損しており、正確な数は不明です。厨子甕の中には石製の家型が一つ、その他は全て陶製であり、特に玉城朝薫のものはマンガン掛けの厨子甕でした。全体的に見ても、かつての名家にしては質素で、特異な構成となっています。墓中符も発見されていますが、造墓年についての詳細は記載されていません。
墓の歴史
玉城朝薫はかつて首里石嶺町にある「一ツ墓」と呼ばれる個人墓に埋葬されていましたが、1899年に前田の墓に厨子甕が移葬されたとされています。元の一ツ墓は空っぽになりましたが、昭和初期にはまだ残存していました。王国時代では、個人墓は特殊な事情の者に限られていたため、朝薫が個人墓に葬られた理由は不明ですが、それ自体が当時としては異例でした。また、洗骨の作業が1805年に行われ、これは通常の期間と比べても異例です。
玉城朝薫の墓は亀甲墓の祖型と見なされており、正確な造墓年は不明ですが、護佐丸や伊江御殿の墓よりも古い可能性があります。沖縄戦では大きな被害を受けるものの、1988年に発掘調査が実施され、1995年に浦添市の史跡に指定され、その後2005年には修復工事によって元の姿を取り戻しました。
参考文献
関連項目
外部リンク
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