琉球石灰岩

琉球石灰岩とは

琉球石灰岩は、南西諸島に広く分布する石灰岩の地層です。主に更新世の時代に、サンゴ礁の活動によって形成されました。1925年に、地質学者の矢部長克と半沢正四郎によって命名されました。

分布

琉球石灰岩は、南西諸島の中部から南部にかけて広く分布しています。特に沖縄県では、その土地の約30%を占めるほど広範囲に存在しています。地層の厚さは最大で150mにも達します。

琉球石灰岩が露出する主な地域

鹿児島県：宝島（分布の北限）、喜界島、沖永良部島、与論島
沖縄県：伊江島、瀬底島、古宇利島、津堅島、粟国島、沖縄島中南部、北大東島、南大東島、宮古島、伊良部島、多良間島、水納島、石垣島南部、竹富島、黒島、波照間島

琉球石灰岩が形成されるには、浅い海でサンゴ礁が発達する必要があるため、その存在は当時の海水面が現在よりも高かったことを示しています。また、地層の分布や深さから、南西諸島で起きた地殻変動の影響を知る手がかりとなります。例えば、慶良間諸島付近では、海面下80m付近に琉球石灰岩の地層が確認されており、この地域で沈降が起きたと考えられています。

地形

琉球石灰岩は、南西諸島の基盤となる島尻層泥岩の上に、台地を形成するように分布しています。台地の周囲は急斜面となっているのが特徴です。地層内には、玉泉洞をはじめとする数百ヶ所の鍾乳洞が形成されています。一般的な石灰岩地層ではドリーネと呼ばれる窪地が多く見られますが、琉球石灰岩の地層では堤防状の丘が多く見られます。これは、断層などで石灰岩が露出すると、再結晶化によって硬くなり、侵食されにくくなるためと考えられています。

性質と利用

琉球石灰岩は、多くの気孔を含んでいるため、大量の地下水を浸透させる性質があります。また、水を通しにくい島尻層泥岩との境界付近には、湧水が多く見られます。宮古島では、この性質を利用して福里ダムなどの地下ダムが建設されています。

沖縄県では、琉球石灰岩は古くから建材として利用されてきました。道の石畳や家々を囲む石垣、首里城などのグスクや玉陵などの陵墓も、この石で作られています。現在でも、石垣や亀甲墓などの建材として、また道路舗装用のアスファルトに混ぜる骨材としても用いられています。ただし、琉球石灰岩で舗装された石畳や道路は、雨で濡れると非常に滑りやすくなるため、注意が必要です。

種類

琉球石灰岩は、形成された海域の水深や環境によって、様々な種類に分類されます。南西諸島の地盤は隆起と沈降を繰り返しており、さらに海水準変動の影響も加わっているため、地域や形成された時代によって、異なる種類の石灰岩が確認できます。

サンゴ石灰岩: 造礁サンゴの化石を多く含む石灰岩。
石灰藻球石灰岩: 石灰藻球を多く含む石灰岩。
サイクロペリウス石灰岩: サイクロペリウスやオパキュリナなど、大型の有孔虫を多く含む石灰岩。
砕屑石灰岩: 有孔虫、サンゴ、藻類、コケムシなどの破片を多く含む石灰岩。

このように、琉球石灰岩は多様な種類が存在し、地質学的な研究対象としても重要な石材です。

脚注

山内豊聡監修、土質工学会九州支部編 『九州・沖縄の特殊土』 九州大学出版会、1983年。

関連項目

島尻層泥岩

外部リンク

* 『琉球石灰岩』 - コトバンク

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