玉川旅館

玉川旅館の歴史と魅力

玉川旅館（たまがわりょかん）は、千葉県船橋市に位置していた温泉旅館で、正式名称は割烹旅館 玉川（かっぽうりょかん たまがわ）です。創業は1921年（大正10年）に遡り、長い歴史を持つこの旅館は、訪れる人々に和風の優雅さを提供してきました。ただし、2020年、新型コロナウイルスの影響で廃業し、同年の6月には建物が取り壊される事態となりました。

旅館の特徴

玉川旅館は、格式と伝統を重んじた老舗の割烹旅館であり、本館、第一別館、第二別館の3棟は国の登録有形文化財として保護されていました。これらの建物は創業当初から存在しており、旅行者にその歴史深い雰囲気を伝えていました。一部の部屋は近年建てられたものでありながら、全体として大正ロマンの趣を醸し出しています。

旅館内の部屋は「月の光」をテーマにしたアール・デコ調の照明が特徴的で、白い漆喰の壁、機能性と美しさを兼ね備えた幾何学的なフォルムの天井が施されています。これにより、訪れた客はまるで別世界にいるかのような時を過ごすことができました。また、地元のボランティアガイド団体「ディスカバー船橋」の協力で館内のガイドも行われ、訪問者にさらに深い理解を提供していました。

芸術と文豪の足跡

玉川旅館は、松本人志が監督した映画『大日本人』のロケ地としても知られています。また、文学界の著名人である太宰治が滞在したという逸話もあります。彼は第二別館の「桔梗の間」に泊まり、ここで『ダス・ゲマイネ』や『虚構の春』『狂言の神』といった傑作を執筆しました。

湊温泉

玉川旅館は、泉質においても注目される存在でした。日本温泉協会に認定された温泉を有し、メタ珪酸やメタ硼酸が含まれる単純温泉で、地下218メートルから湧出する薄茶褐色の医療用温泉を浴槽で楽しむことができました。湯処は大小の浴室があり、大浴場には露天風呂も併設されていて、多くの訪問客がこの癒しの空間を楽しみました。

アクセス

旅館へは公共交通機関の利用が便利で、最寄りのJR東日本の船橋駅からは約10分、京成電鉄の京成船橋駅からは約8分の距離にありました。また、自動車でのアクセスも可能で、京葉道路の船橋インターチェンジや花輪インターチェンジからの便も良かったです。

終わりに

玉川旅館の日々は、千葉県船橋市の歴史と共にあり、多くの人に愛されてきました。しかし、新型コロナウイルスの影響によってその歴史に幕を下ろすこととなりました。その記憶を今も何かしらの形で抱き続ける人々がいることを願っています。

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