玉泉園

玉泉園：金沢に息づく、歴史と美が織りなす庭園

玉泉園は、石川県金沢市に位置する、約2370平方メートルの広大な池泉回遊式庭園です。兼六園の緑を背景に、江戸時代の初期から中期にかけて、加賀藩士である脇田氏によって約100年の歳月をかけて作庭されました。庭園の名前は、加賀藩二代藩主・前田利長の正室である玉泉院に由来します。

三つの庭が織りなす景観

玉泉園は、本庭、西庭、東庭の三つの庭から構成されています。山畔の崖地を巧みに利用した二段式の池泉回遊式庭園で、庭園内には作庭以前からあったとされる巨木が茂り、歴史を感じさせます。都市部では珍しいミズバショウが自生しているのも特徴です。

兼六園の徽軫灯籠付近の曲水から水を引いていることからも、作庭者である脇田氏と藩主との親密な関係がうかがえます。

灑雪亭露地：茶の湯の文化に触れる

本庭最上段にある灑雪亭露地は、約570平方メートルの広さがあります。慶安4年（1651年）には、三代藩主・利常に招かれた千仙叟宗室（裏千家始祖）の指導により作られました。庭園の中心には宏大な池があり、東部には茶席「灑雪亭」が設けられています。

灑雪亭の名前は、脇田家二代当主・直能が、藩の招きで来藩していた儒学者・木下順庵が庭園を訪れた際に詠んだ詩の一節「飛泉蔭雪灑」から取られました。順庵自身が命名したとされています。

灑雪亭は、一畳に台目二畳という簡素な席で、利休の侘びの精神を尊重した造りとなっています。金沢市内に現存する茶室としては、最も古いものの一つです。

玉澗流庭園：幻の様式

玉泉園は、全国でも数少ない「玉澗流」という様式で築庭されていることが判明しています。「玉澗」とは、中国南宋時代の画僧・芬玉澗のことです。玉澗は多くの山水図を残しており、そのうちの一枚が玉泉園の東滝を中心とした崖地の作庭と酷似していることが、近年の調査で明らかになりました。

玉澗流庭園の特徴としては、

築山が二つ設けられている
築山の間に滝が組まれている
滝の上部に石橋（通天橋）が組まれている
石橋の上部が洞窟式になっている

といった点が挙げられます。玉泉園は、これらの特徴をすべて備えています。

歴史を経て、一般公開へ

玉泉園と灑雪亭露地は、明治38年（1905年）に西田家の所有となり、三代にわたって個人の手で維持・管理されてきました。昭和46年（1971年）に財団法人西田家庭園保存会が設立され、寄贈を受けたことで一般公開されるようになりました。

現在では、多くの人々が玉泉園を訪れ、その美しい景観と歴史に触れています。

周辺施設

兼六園
加賀友禅会館
金沢大学附属特別支援学校

関連情報

公式サイト:西田家庭園 玉泉園
* かなざわ玉泉邸

玉泉園は、金沢の歴史と文化を伝える貴重な庭園です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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