玉澗

玉澗（ぎょくかん、生没年不詳）は、中国南宋末から元初の時代に活躍した画僧です。婺州蘭渓県（現在の浙江省金華市蘭渓市）の出身で、南宋時代を生きたとされ、80歳で没したという説があります。彼の専門分野は中国絵画の中でも禅画であり、特に水墨による山水画に優れていました。作品の形態は平面芸術に分類されます。

玉澗は室町時代以降の日本において、同じく南宋末の画僧である牧谿（もっけい）と並び称される存在となりました。特に、海北友松（かいほうゆうしょう）に最も大きな影響を与えた画家として知られています。

玉澗の画風と特徴

「玉澗」という号を用いた画家は複数存在しますが、「廬山図」や「瀟湘八景図断簡」などの作品の筆者は「玉澗若芬（ぎょくかんじゃくふん）」であると考えられています。若芬は名、仲石は字、俗姓は曹氏です。彼は臨安の上天竺寺（じょうてんじくじ）で書記を務めていました。山水画の他に、墨竹や墨梅なども得意とし、独特な書も能くしました。また、詩にも通じていたと伝えられています。

玉澗による山水画の様式は、室町時代の日本において「草山水（そうさんすい）」と称されました。草山水は、写実的な表現よりも、筆墨の勢いや余白を重視する、より自由で奔放な画風です。この画風は、日本の水墨画に新たな表現の可能性をもたらしました。

日本への影響

日本の室町時代の画家である雪舟（せっしゅう）も、玉澗から大きな影響を受けた一人です。雪舟は、「玉澗」の名を記した山水図（岡山県立美術館蔵、国重要文化財）を残しており、玉澗の画風を学び、自らの作品に取り入れていたことがわかります。雪舟の作品には、玉澗の草山水の影響が見られ、日本の水墨画の発展に大きく貢献しました。

庭園への影響

玉澗の画風は、絵画だけでなく、日本の庭園にも影響を与えています。例えば、名古屋城の二之丸庭園は、玉澗の画風を取り入れた作庭であるとされています。また、金沢市にある玉泉園も、玉澗の山水図に影響を受けて作られた庭園であると伝えられています。これらの庭園は、玉澗の描く自然観や空間構成を参考に、独特の景観を創り出しています。

玉澗の作品は、現存するものが少ないため、その全貌を把握することは困難ですが、彼の画風が日本の水墨画や庭園に与えた影響は非常に大きいと言えるでしょう。

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