王丹

王丹（ワン・タン）は、1969年生まれの中国の政治活動家、人権活動家、歴史学者です。1989年の天安門事件では、学生指導者の中心人物として活躍し、中国民主化運動の象徴的な存在として知られています。北京大学教授の息子として生まれた王丹は、自身も北京大学に進学。天安門事件当時は、同大学の一年生でした。

事件発生時、王丹はウーアルカイシや柴玲らと共に学生運動の指導者となり、国内外のメディアを通じてその名が広く知られるようになりました。しかし、政府による弾圧が始まると、王丹は指名手配犯の筆頭となり逮捕、投獄されます。1995年にも再度逮捕、有罪判決を受けました。母親である歴史学者の王凌雲も、天安門事件後に不当に拘束され、足に後遺症が残りました。

王丹は錦州監獄に政治犯として収容されていましたが、国際的な圧力により1998年に仮釈放され、アメリカに亡命しました。2008年にはハーバード大学で東アジア史の博士号を取得し、その後オックスフォード大学で上級研究員を務めました。現在は台湾を拠点に中国民主化運動を続けながら、台湾の国立清華大学など複数の大学で教鞭を執っています。

王丹は、現在でも世界で最も著名な中国民主運動家の一人であり、ノーベル平和賞受賞者である劉暁波が提唱した「08憲章」に賛同しています。また、2012年には盲目の法律家である陳光誠がアメリカに亡命した直後に面会しています。

2011年には、台湾のメディアによって、元中華民国総統の陳水扁から機密費を受け取っていたと報道されました。当初、王丹はこれを否定しましたが、後に機密費の受領を認めました。この件は、台湾国内で議論を呼びました。

また、2011年に行われた読売新聞のインタビューでは、天安門事件当時よりも中国の民主化や人権状況が悪化していると指摘しました。王丹は、以前は政府批判や民主化の議論ができたが、現在では当局の弾圧を恐れて誰も何も言えなくなっていると述べています。

2012年には、アムネスティ・インターナショナル日本支部と映画会社シグロの招聘で初来日し、慶應義塾大学や東京工業大学などで講演を行いました。また、自身が出演する映画「亡命」の上映会にも登壇し、日本のメディアや一般の人々、在日中国人からも大きな反響がありました。王丹は、中国の民主化問題においてインターネットの重要性を強調し、日本国内での中国問題への関心を訴えました。また、自身も日本の文化や文学に関心を持ち、ハーバード大学在学中には日本語を学んでいました。

2013年には、台湾でひまわり学生運動が起こった際、ウーアルカイシと共に学生たちを励ましました。台湾では、中国本土で反政府デモを指導した王丹は、政治に関心の高い若者層から支持されています。

2016年には、アメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ候補が、天安門事件の弾圧を肯定するかのような発言をしたことを受け、魏京生やウーアルカイシらと共に抗議活動を行いました。また、同年には再来日し、天安門事件追悼集会で講演を行いました。

2023年6月には、男性への性的暴行で告発されました。告発者によると、9年前にニューヨークのホテルで王丹からキスをされ、押し倒されたとのことです。王丹はセクハラの事実を否定しましたが、この騒動を受けて台湾の精華大学は王丹の授業を取りやめました。王丹の支持者たちは、この事件は中国共産党の陰謀であると主張しています。また、この件以外にも複数の男性が王丹からのセクハラを訴えていると報じられています。

王丹は、天安門事件を経験した世代として、現在も中国民主化のために活動を続けています。その活動は、中国だけでなく世界中の民主主義を支持する人々に影響を与えています。

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