王位排除法案

王位排除法案とイングランドの政治的変遷

王位排除法案（おういはいじょほうあん、Exclusion Bill）は、カトリック信仰を持つ王位継承者に対する疑念から生じた重要な政治的提案であった。この法案は、後にイングランド王となるヨーク公ジェームズ（のちのジェームズ2世）が王位継承権を持つことを阻止することを目的としていた。これは、1670年代にカトリックへの反感が高まる中で、イングランド議会に提出されたものである。

背景

チャールズ2世が無子のまま亡くなると、国王の実弟であるヨーク公ジェームズが王位継承権を握ることとなった。ただし、ジェームズは公然とカトリック信仰を示し、プロテスタントが大多数を占めるイングランドにおいて非常に物議を醸す存在だった。1640年代のカトリック陰謀事件が発覚すると、国民の間にはカトリックに対する敵意が広がり、特にジェームズが国を治めることへの懸念が高まった。

この状況を受けて、地方派の指導者であるアントニー・アシュリー＝クーパー伯爵を中心に、カトリック信者を王位継承から排除する法案が議会に提出された。これに対して、チャールズ2世派である宮廷派は歴史的な王位継承権は血統によって保証されるべきであると主張し、強く反発した。

議会での対立

1679年3月、カトリック排除の法案が議会に提出された。しかし、チャールズ2世はこれを阻止し、議会を解散した。次の選挙では地方派が議会の大多数を押さえる結果となり、宮廷派は反発を強めたものの、議会の開催を拒否する状態が続いた。さらに1680年10月、新しい議会で再度法案が提出されたが、上院では多数を占める宮廷派により否決されてしまった。

地方派は、議会の新しい開催が期待された1681年3月に法案を再提出するも、チャールズ2世は再びすぐに議会を解散し、その後彼の死まで議会を招集しなくなった。

カトリックの国王の期待

この時期、ジェームズがカトリックの王位を継承する可能性が見えてきたため、フランスのルイ14世からの財政的支援が決定された。一方、地方派の力は衰退し、ジェームズ2世が新国王として即位した後、モンマス公が反乱を試みるも、失敗し処刑されることとなった。

結論

この一連の出来事において、地方派と宮廷派の対立は激化し、それは後にホイッグ党とトーリー党の形成へとつながる。また、王権神授説に対する批判も強まり、イギリスにおける絶対王政の可能性は十分には成立し得ないとされた。ロックによる批判的な主張は、後の名誉革命の背景にも影響を及ぼしている。

このように、王位排除法案はイングランドの歴史における重要なターニングポイントであり、宗教的信念が政治的対立に大きな影響を与えたことを示している。

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