王冠植民地

王冠植民地（おうかんしょくみんち）とは

王冠植民地（Crown colony）とは、かつてイギリス（イングランド）において、王室の直轄領であった植民地を指します。王領植民地、または王室植民地とも呼ばれ、直轄植民地という名称も用いられます。

イギリスの植民地は、統治形態によっていくつかの種類に分類できます。その中でも王冠植民地は、領主植民地や自治植民地（特許植民地）とは異なる特徴を持っていました。

王冠植民地では、総督（Governor）をはじめとする植民地政府の高官は、本国の王室によって任命されました。絶対王政の時代には国王が直接任命を行っていましたが、18世紀以降は植民地大臣や本国議会の助言に基づいて任命されるようになりました。

植民地には、現地の住民から構成される植民地議会（参事会）が設けられるのが一般的でした。植民地議会は、君主に対する枢密院のように総督を補佐する役割を担っていましたが、自治権を巡って総督と対立することも少なくありませんでした。18世紀末のアメリカでは、そのような対立が顕著に見られました。

王冠植民地の歴史

初期のイギリス植民地は、領主植民地や自治植民地として設立されることが多く、国王から与えられた特許状（勅許状）に基づいて植民地法人が設立され、統治が行われていました。

1624年に成立したバージニア植民地は、最初の王冠植民地です。バージニア植民地は、元々1607年に建設されたバージニア会社の特許植民地（ジェームズタウン植民地）でしたが、特許が取り消され、王室の直轄領となりました。

「王冠植民地」という用語は後世に作られたもので、19世紀半ばまではトリニダード・トバゴのように対外戦争で獲得した植民地を指すことがありました。その後、英領インドを除くすべてのイギリス領土、およびカナダ、ニューファンドランド、ブリティッシュコロンビア、ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、南オーストラリア、タスマニア、ビクトリア、西オーストラリア、ニュージーランドなどの自治領（ドミニオン）に広く適用されるようになりました。

アメリカ独立時の13植民地のうち、王冠植民地であったものは8つ（ニューハンプシャー、マサチューセッツ、ニューヨーク、ニュージャージー、バージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージア）でした。領主植民地や自治植民地よりも数は多いものの、最初から王冠植民地として設立された植民地はありません。経営に失敗したり、国防上の重要性が高い植民地が、王室の直轄地となるケースが見られました。

王冠植民地の統治機構

王冠植民地では、国王によって任命された総督（勅任総督）が、統治者として現地で執務を行いました。19世紀半ば頃からは、植民地大臣の助言に基づいて総督が任命されるようになりました。時代が下ると、本国議会の助言によって総督が任命されることもありましたが、植民地人は本国議会に代表を持たないため、植民地人が総督を選ぶことは原則としてありませんでした。ただし、マサチューセッツ湾直轄植民地のように、総督の任命にあたって植民地人の助言が認められていた事例も存在します。

総督は通常、植民地人から選出された植民地議会（参事会）と協力して行政を行いました。植民地議会は、立法や課税など広範な権利を持っていました。17世紀には、総督が植民地議会の代議士を任命したり、意に沿わない議会を解散させるなど、強権を振るうこともできましたが、議会は立法権と予算の支出権を持ち、総督を牽制することで自治権を拡大させていきました。

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