王叔銘

王叔銘（おう しゅくめい / ワン・シューミン）

王叔銘は、中華民国空軍の軍人として、その生涯を激動の時代とともに歩みました。本名は王鑂でしたが、後に王勲と名乗るようになります。

初期の軍歴とソ連留学

1924年、王叔銘は黄埔軍官学校の第1期生として入学し、軍人としての道を歩み始めました。卒業後、広東航空学校で航空技術を学び、1925年には反乱鎮圧に参加するなど、初期から実戦経験を積んでいます。

その後、王叔銘はソ連へ留学し、複数の航空学校で高度な軍事教育を受けました。この留学中、中国共産党に入党しましたが、1931年の帰国時に脱党しています。この経験は、後の彼のキャリアに複雑な影響を与えることになります。

空軍での活躍

帰国後、王叔銘は中央航空学校で飛行教官を務め、厳格な基準で多くのパイロットを育成しました。しかし、イタリア軍事顧問団が導入した訓練方式は、質の低いパイロットを増やすという批判も受けました。1930年代後半には、日中戦争勃発に伴い、ソ連との間で軍事援助の交渉にあたるなど、外交的な役割も担いました。

日中戦争中には、空軍軍士学校の教育長や駐ソ空軍武官などを歴任し、空軍の強化に尽力しました。1940年代には、空軍第3路司令官、空軍軍官学校教育長、そして昆明に新設された空軍第5路司令官を兼任するなど、その多忙な日々がうかがえます。

戦後と台湾時代

戦後、王叔銘は空軍総司令部副総司令兼参謀長に就任し、空軍の再編を指揮しました。1952年には空軍総司令に昇進し、アメリカとの関係を強化しながら、F-84戦闘機をはじめとする多数の航空機を購入しました。また、米軍の資料を翻訳し、空軍の訓練、維持、作戦能力を向上させることに貢献しました。

さらに、京劇宣伝部隊として大鵬劇芸実験学校と大鵬劇隊を設立するなど、文化的な活動にも関わりました。

晩年と遺産

1957年には国防部参謀総長に就任し、軍の最高幹部として活躍しました。その後、戦略顧問委員会副主任委員、駐連合国安全理事会軍事参謀団中国代表団空軍代表、駐ヨルダン大使などを歴任し、外交面でも貢献しました。1975年には総統府戦略顧問となり、その長い軍歴に幕を下ろしました。

1998年、王叔銘は心臓病と大腸癌の合併症により亡くなりました。彼の死後、息子によって提供された日記は、その複雑な内面を垣間見ることができ、特に参謀総長解任時の蒋介石・蒋経国親子への不信感と、後の賛辞という変化が注目されます。

捕虜尋問のエピソード

王叔銘には、中国軍の捕虜となった白浜幸吉軍曹を尋問した際のエピソードが残っています。白浜が虚偽の情報を述べた際、王叔銘は激怒して彼を殴打しましたが、その後、真実を語らせると、食事をふるまうなど、寛容な一面も見せました。このエピソードは、王叔銘の複雑な人格を象徴するものとして語り継がれています。

栄典

王叔銘はその軍事的な貢献と功績から、数々の勲章を授与されました。三等空軍復興栄誉勲章、青天白日勲章、四等雲麾勲章、四等宝鼎勲章、二等景星勲章、三等宝鼎勲章、二等宝鼎勲章、二等雲麾勲章、河圖勲章、一等雲麾勲章、一等景星勲章など、その数は多岐にわたります。

王叔銘の生涯は、軍人としての献身と政治的な葛藤、そして激動の時代を生き抜いた一人の人物の物語として、後世に語り継がれるでしょう。

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