王善 (元)

王善（おう ぜん）

王善（1183年 - 1243年）は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した人物で、字は子善、真定府藁城県の出身です。

生涯

孝行で知られた王増の息子として生まれました。王善は、その声が鐘のように響き渡り、知略に優れ、騎射を得意とする人物として知られていました。

金朝がモンゴルの侵攻を受け、都を開封へ遷都すると、華北は荒廃し食糧不足に陥りました。王善も困窮しながら母を支えていましたが、1215年に各地で群盗が蜂起すると、その治安悪化を憂慮した住民たちは王善を長に推戴しました。王善が法を整備し、守備体制を強化したことで、群盗は近寄ることができなくなったといいます。

1218年、王善は権中山府治中となりましたが、当時真定一帯を支配していた武仙は、王善の威名を妬み、知府の李済と府判の郭安に王善を排除するよう命じました。1219年秋、李済と郭安は兵を伏せて王善を呼び出しましたが、王善は陰謀を察知して逃れ、80人の部下を集めて李済と郭安を殺害しました。その後、王善は部下たちに累が及ばないよう、自らの首を武仙に差し出すことを提案しましたが、部下たちは王善の犠牲を拒否しました。そのため、王善は遂に部下たちと共にモンゴルに降伏し、元のまま知中山府事の地位を承認されました。

同年冬、王善は300の兵を率いて武仙を攻め、武仙は精鋭2000の兵を派遣して迎え撃ちましたが、王善は敵将を討ち取ることで勝利しました。これを知った武仙は城を捨てて逃亡し、王善は武仙の本拠地を攻略してここを拠点としました。王善の活躍により、中山以南の42州郡が降伏するに至りました。

1220年、王善は中山真定等路招討使の地位に移り、その後、右副元帥・驃騎大将軍の称号を授けられて藁城に駐屯しました。1222年には藁城は匡国軍に昇格し、1223年には金吾衛大将軍・左副元帥の地位に進みました。この頃、武仙は窮地に陥りモンゴルに降伏し、モンゴルは他の漢人世侯と同様に、降伏時の地位を保証しました。しかし、王善は「武仙は野心家であり、最後には裏切るでしょう」と進言し、城壁を補修して備えることを進言しました。果たして武仙はモンゴルに反旗を翻し、王善を攻めましたが、王善の奮戦により撃退されました。武仙は部下の宋元とともに捕虜を率いて南へ退却しましたが、王善は追撃して捕虜を取り戻しました。武仙はその後、真定地方を奪還することはなく、部下たちの多くもモンゴルに降伏しました。これらの功績により、1226年には金虎符を与えられ、行帥府事となりました。

1232年からは、第2代皇帝オゴデイの金朝親征に従軍し、王善率いる部隊は鄭州に至りました。鄭州を守る馬伯堅は王善の威名を知っており、城に登って大声で王善に降伏を呼びかけました。王善はただちに冑を脱いで馬伯堅と語らい、鄭州を降伏させました。王善は軍中に厳しく略奪を禁じたため、民は安堵し、王善に従って黄河以北に移住する者が多く現れました。王善はこれらの人々を受け入れ、田地を分配して生活を安定させました。

1236年には河北西路兵馬副都総管の地位を兼ねるようになり、1241年には知中山府事を授かりました。その後も、苛斂誅求を禁じる統治で民から慕われましたが、1243年に61歳で亡くなりました。息子には、南宋との戦いで戦死した王慶淵と王慶端がいました。

王善は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて、その軍事的な才能と民を慈しむ統治によって名を残した人物です。

参考文献

愛宕松男『東洋史学論集　4巻』三一書房、1988年
『元史』巻151列伝38王善伝
* 『新元史』巻148列伝35王善伝

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