王禔

王 禔（おう し）の人生と業績

王禔（おう し）は、清末から民初にかけて活躍した篆刻家および書家である。彼の本名は寿祺（じゅき）で、後に禔（し）と改名した。字（あざな）は維季（いき）で、複数の号を持ち、例えば福庵、福厂、鋤石農などがある。特に70歳を過ぎてからは、持黙老人（じもくろうじん）と名乗るようになった。出身地は杭州府仁和県である。

家族背景と早年期

王の父である王同伯は金石研究家として知られ、多くの著述を残した。その影響を受けて、王禔は幼い頃から父親の教えを受け、印の彫刻技術や書法を磨いた。また、数学や製図にも秀でており、それを活かして鉄道に従事した経験もある。こうした多才な背景が彼の後の芸術活動に大きく寄与したのだ。

西泠印社の設立

1904年、王禔は20代にして、名のある篆刻家である丁仁、葉銘、呉隠と共に名門の西泠印社を設立した。これは篆刻技術の振興を目的とした組織であり、この活動が後に彼自身の名声を高める基盤となった。

北京および皇宮での活動

その後、1913年には各地を巡りながら経験を積み、北京印鋳局の技師として活動を開始する。この時期、故宮博物院古物陳列所での鑑定も行い、特に羅振玉の印譜『金薤留珎』の編集に関与した。この経験により、彼は古物や印譜の世界でも名を馳せることとなる。

晩年の業績

1930年に上海に戻ると、彼は書や印を売って生計を立てた。晩年には浙江省文史館の館員として、また上海国画院の画師として活動を続けた。さらには中国金石篆刻研究社の主任委員にも選出され、学界における影響力を増していった。

技術と教育法

篆刻に関しては、初めは浙派を学び、後には鄧派（鄧石如派）と趙派（趙之謙派）の技術を吸収した。王禔は常に正確な刻法を重視し、素朴でありながら力強い作風を持っており、弟子たちにも厳格な教育を施すことで基礎を固めた。その後、個々の独自性を引き出す指導が評価されている。また、書に関しては金石文や小篆の分野で当時の第一人者とされ、隷書や楷書においても高い評価を得た。

古印の収蔵家

王禔は古印の収蔵家としても知られ、彼の印章はコレクターや研究者から高く評価されている。彼の生涯は多くの人々に影響を与え、享年82で幕を閉じた。彼の残した著作は、篆刻や書の技術を学ぶ上で非常に貴重な資料となっている。

著作

王禔の著書としては『説文部屬検異』や『麋硯斎作篆通假』、『福庵蔵印』、『麋硯斎印存』などがあり、これらは彼の技術や見識を示す重要な文献である。彼の仕事は篆刻界における金字塔であり、今なお多くの人々に影響を与え続けている。

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