王立グリーンランド貿易会社

王立グリーンランド貿易会社（Den Kongelige Grønlandske Handel）は、1774年にデンマークによって設立された貿易会社です。この会社は、後に民営化され、現在のロイヤル・グリーンランド社（Royal Greenland）として知られています。その歴史は、グリーンランドとデンマークの関係、そして国際的な貿易の変遷を映し出しています。

デンマークによるグリーンランドの実効支配

グリーンランドは中世以来デンマークの領土でしたが、実効的な統治は行われていませんでした。しかし、1721年にデンマークが遠征隊を派遣し、グリーンランドの植民地化が始まりました。1774年、デンマーク政府はグリーンランドの貿易を独占するために王立グリーンランド貿易会社を設立し、その統治も同社に委ねました。この措置は、利益を政府に集中させる目的がありました。しかし、実際には会社はイヌイットとの交易品の買い付けを独占する役割に終始し、交易所を設置する以上の統治は行われませんでした。この独占貿易は、当時北極海に進出していたイギリス、オランダ、アメリカを締め出すことに成功しました。

20世紀の変化と統治権の回収

20世紀に入り、世界情勢が変化する中で、王立グリーンランド貿易会社によるグリーンランドの統治は困難になっていきました。1912年、デンマーク政府は同社から統治権を回収しましたが、グリーンランドの深奥部では依然として行政が十分に行き届いていませんでした。この状況に目をつけたアメリカ、ノルウェー、スウェーデンなどがグリーンランドの領有権を主張し始め、事態は複雑化しました。最終的には、デンマーク政府がグリーンランドの実効支配を強化し、他国の領有権主張に対して国際司法裁判所に提訴、1933年にグリーンランドをデンマーク領とする決定が下されました。

第二次世界大戦後の変化と民営化

王立グリーンランド貿易会社は、統治権がデンマーク政府に移った後もグリーンランド貿易を独占し続けましたが、1940年にデンマーク本国がナチス・ドイツに占領されると経営難に陥り、一時的に営業を停止しました。その後、グリーンランドがデンマークに返還されると、同社は経営を再開しましたが、貿易独占権は廃止されました。この変革の中で、同社は水産会社「ロイヤル・グリーンランド社」として再出発を遂げました。長らくデンマークの国営企業でしたが、1979年にグリーンランドが自治領となると、グリーンランド政府の公社となりました。1990年には民営化され、グリーンランド市民所有の株式会社となりましたが、歴史的な背景から「ロイヤル」の名を冠するブランド企業として存続しています。

現在のロイヤル・グリーンランド社

現在のロイヤル・グリーンランド社は、世界有数の漁業・水産加工会社として経営を続けており、特に冷水エビの販売では世界最大規模を誇ります。日本にも現地法人を設けており、2003年の時点で、日本に流通する甘エビの25%を供給していました。同社は、その長い歴史の中で、グリーンランドの経済と深く結びつき、今日に至るまで重要な役割を果たし続けています。

出典：JETRO「デンマークの水産物と漁業」

外部リンク：株式会社ロイヤルグリーンランドジャパン

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