王立バイエルン邦有鉄道

王立バイエルン邦有鉄道：バイエルンの鉄道史を彩る軌跡

王立バイエルン邦有鉄道（Königliche Bayerische Staats-Eisenbahnen、K.Bay.Sts.B.）は、1844年にバイエルン王国によって設立された国有鉄道です。日本語では、バイエルン邦有鉄道、バイエルン官有鉄道、バイエルン王立鉄道、バイエルン国鉄などとも呼ばれています。ドイツ帝国成立以前、各領邦が独自に鉄道を運営していた時代から、その発展は始まりました。

ドイツ帝国以前の鉄道事情

1871年のドイツ帝国成立以前、ドイツ語圏の多くの領邦は、プロイセン王国、バイエルン王国、ザクセン王国、バーデン大公国、ヴュルテンベルクなど、それぞれが独自の鉄道網を築いていました。これらの鉄道は、運営上の協力を深めつつも、帝国成立後も第一次世界大戦後まで独立して運営されていました。

王立バイエルン邦有鉄道の発展

王立バイエルン邦有鉄道は、バイエルン王国領であったプファルツ地方のプファルツ鉄道を含め、第一次世界大戦終結時点で8,526kmの路線網を有していました。これは、ドイツ帝国の各邦有鉄道の中では、プロイセン邦有鉄道に次いで2番目の規模でした。

第一次世界大戦後、バイエルン王が退位したことで「王立」の称号がなくなり、バイエルン邦有鉄道（Bayerische Staatseisenbahn）と改称されました。1920年4月1日には、ドイツ国営鉄道（ドイツ国鉄）のバイエルン群管理局（Gruppenverwaltung Bayern）となり、アウクスブルク、ミュンヘン、ニュルンベルク、レーゲンスブルクの4地区に分けて管理されました。旧プファルツ鉄道はルートヴィヒスハーフェン地区となりました。1933年10月1日、バイエルン群管理局はドイツ国営鉄道内で唯一の群管理局として廃止されました。

バイエルンの幹線

王立バイエルン邦有鉄道の初期には、以下の3本の幹線の建設に注力しました。

ルートヴィヒ南北鉄道（Ludwig-Süd-Nord-Bahn）: 全長548km。1844年から1853年にかけて建設。リンダウからケンプテン、アウクスブルク、ニュルンベルク、バンベルクを経由し、ホーフで王立ザクセン邦有鉄道と接続しました。
ルートヴィヒ西部鉄道（Ludwigs-West-Bahn）: 全長100km。1852年から1854年にかけて建設。バンベルクからシュヴァインフルト、ヴュルツブルクを経由し、アシャッフェンブルクでヘッセン大公国と接続しました。
バイエルン・マクシミリアン鉄道（Bayerische Maximiliansbahn）: ウルムからアウクスブルク、ミュンヘンからクーフシュタインまで。オーストリアのザルツブルクへの支線がありました。1853年から1860年にかけて建設され、全長188kmでした。

その後も鉄道網は拡大し、1880年代半ばからは支線網が地方部まで広がりました。

バイエルン東部鉄道株式会社

1856年、バイエルン議会は私設鉄道会社の設立を許可し、バイエルン東部鉄道株式会社に以下の路線の建設・運営を許可しました。

ニュルンベルク - アムベルク - シュヴァンドルフ - レーゲンスブルク区間
ミュンヘン - ランツフト - シュトラウビング区間
レーゲンスブルク - シュトラウビング - パッサウ区間（オーストリア国境まで）
シュヴァンドルフ - フルト（ヴァリト）区間（ボヘミア王冠領境界まで）

これらの路線は5年以内に建設され、支線の建設や経路の直線化も規定されました。

バイエルンの支線

支線網はバイエルン地方部で一般的となり、柵のない線路を走ることから「bimmelnbahn」という愛称で呼ばれました。180以上の路線があり、約20本は私鉄でした。ほとんどは標準軌でしたが、一部に狭軌の路線もありました。しかし、モータリゼーションにより多くが廃止され、1977年には79本しか残っていません。一方、博物館鉄道として運行されている路線や、国境開放により再開された路線もあります。

支線は低い規格で敷設され、軸重が制限されていました。標準のバラストの代わりに土や砂、灰などが使われ、鉄道橋は簡素なものが多く、線路はできるだけ土木工事を少なくするように建設されました。1890年代から支線用の客車が製造され、当初は緑に白線の塗装が施されました。これらの車両は1960年代まで使われました。

王立バイエルン邦有鉄道が買収した鉄道

王立バイエルン邦有鉄道は、以下の鉄道会社を買収しました。

1846年: ミュンヘン-アウクスブルク鉄道会社を買収（全長62km）。
1876年: バイエルン東部鉄道の幹線と支線網を買収（総延長900km）。
1909年: プファルツ鉄道となる3つの私鉄を買収（総延長870km）。
プファルツ・ルートヴィヒ鉄道
プファルツ・マクシミリアン鉄道
プファルツ北部鉄道（ノイシュタット-デュルクハイム鉄道を含む）

組織

鉄道の管理組織は、当初鉄道局（Bahnämter）と大鉄道局（Oberbahnämter）でした。大鉄道局はアウクスブルク、バンベルク、インゴルシュタット、ケンプテン、ミュンヘン、ニュルンベルク、レーゲンスブルクなどに置かれていました。1886年以前は王立交通機関理事会、1886年から1906年までは王立バイエルン邦有鉄道理事会の下にありました。1906年に鉄道部が運輸省の下に置かれ、各鉄道部はアウクスブルク、ルートヴィヒスハーフェン/ライン、ミュンヘン、ニュルンベルク、バンベルク、レーゲンスブルク、ヴュルツブルクに置かれ、1920年以降のドイツ国営鉄道にも引き継がれました。

王立バイエルン邦有鉄道の機関車

王立バイエルン邦有鉄道は、自領内のメーカーから機関車を購入していました。特にJ.A.マッファイ社とクラウス社は世界的に有名で、同鉄道は機関車の設計・調達で大きな恩恵を受けました。1899年と1901年には、アメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークスから機関車を購入し、最新技術を学びました。

有名なバイエルンの機関車

S2/6型: 1906年のニュルンベルク博覧会で展示。1907年にミュンヘン-アウクスブルク間で154.5km/hの速度記録を樹立。ニュルンベルク交通博物館に保存。
S3/6型: パシフィックの複式4気筒機関車で、後にドイツ国鉄18.4-6形となった。多くの鉄道ファンからドイツで最も美しい蒸気機関車と評されている。
Gt2x4/4型: 1913年に完成したマレー式タンク機関車。後にドイツ国鉄96.0形となり、急勾配区間での補助機関車として使用。
PtL2/2型（ガラス箱）: 支線用の象徴的な機関車。大きな運転台が特徴。乗務員が走行中に機関車から他の車両へ移動できた。

バイエルンの鉄道博物館

バイエルンの鉄道史を伝える多くの博物館があります。

アウクスブルク鉄道公園
バイエルン鉄道博物館
バイエルン支線協会
ドイツ博物館
ニュルンベルク交通博物館
フランケン・スイス蒸気鉄道
フライラッシング機関車ワールド
ドイツ蒸気機関車博物館
メルリヒシュタット-フラードゥンゲン鉄道

王立バイエルン邦有鉄道は、バイエルンの産業と文化の発展に大きく貢献し、その遺産は今日でも多くの博物館や保存鉄道で目にすることができます。

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