王立造幣局

イギリス王立造幣局：歴史と技術、そして未来

イギリス王立造幣局は、1100年以上もの歴史を誇る、世界的に有名な造幣機関です。イングランド王国の建国以来、イギリスの通貨生産の中枢として重要な役割を担ってきました。現在では、ロイヤル・ミント社として運営され、イギリス政府との独占契約の下、イギリス国内で流通する全ての貨幣を製造しています。

ロンドンからラントリサントへ：造幣局の移転と近代化

当初、ロンドン塔周辺に拠点を置いていた王立造幣局ですが、1968年からウェールズのラントリサントへと段階的に移転しました。1980年にはラントリサントに設備を集中し、38エーカーの広大な敷地で500名を超える従業員が働いていました。この移転は、近代化と生産能力向上を目的としたもので、最新の技術と設備を導入することで、より効率的で精度の高い貨幣製造を実現しました。ロンドン塔にあった古い施設は、1809年に建てられたジェームズ・ジョンソンとロバート・スマークによる建物が、現在も一部残るのみとなっています。

ロンドン塔時代には、アイザック・ニュートン卿が造幣局長官を務めた時期もありました。ニュートンは1717年、秘密裏にスターリング・ポンドを銀本位制から金本位制に移行させたことで知られています。第二次世界大戦中にはドイツ軍の空爆を受け、操業停止を余儀なくされた時期もありましたが、その後も技術革新を続け、生産能力を向上させてきました。

世界最高水準のセキュリティと精巧な技術

王立造幣局は、イギリス政府の100％子会社であるロイヤル・ミント社の運営の下、国家レベルのセキュリティ対策を敷いています。製造現場には武装警備員が配置され、高度なセキュリティシステムによって、貨幣製造プロセスにおける不正や偽造を厳しく防止しています。

また、王立造幣局はイギリスの貨幣製造にとどまらず、海外の政府や機関からの委託を受け、記念コインやメダルなどを製造しています。その高い技術力と精巧なデザインは世界中で高く評価されており、数多くの国々から信頼を得ています。その生産量は、世界全体の約15％にものぼると言われています。

貨幣検査函審査：伝統と厳格さの継承

王立造幣局では、製造された貨幣が基準を満たしているかを確認するために「貨幣検査函審査」という伝統的な手続きが行われています。これは12世紀にまでさかのぼる歴史を持つ儀式であり、現在も厳格に守られています。専門知識を持つ裁判官が、ツゲの木で作った箱に収められた貨幣サンプルの大きさ、重さ、化学組成などを厳しく審査します。この審査は、貨幣の品質と信頼性を維持するために不可欠なプロセスとなっています。

王立造幣局の未来

ロイヤル・ミント社は、株式公開を経て、現在もイギリス政府に属する上場企業として、その活動を続けています。歴史と伝統を継承しながら、常に革新的な技術開発に取り組むことで、世界最高水準の造幣技術を提供し続けています。これからも、イギリス経済の基盤となる通貨の安定供給に貢献していくとともに、世界中の顧客に高品質な製品とサービスを提供し続けるでしょう。

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