理

中国哲学における「理」とは

「理」（り、Lĭ）は、中国哲学において重要な概念であり、事物の秩序や道理を指します。その語源は、璞（あらたま）を磨いて美しい模様を出すことに由来し、「ととのえる」「おさめる」「分ける」「すじ目をつける」といった意味合いを持ちます。

各思想における「理」の展開

墨家・道家・法家

「理」の語は、『論語』や『老子』には見られませんが、戦国時代後期の『荘子』『荀子』『韓非子』などで多く用いられるようになります。

• - 墨家: 道徳的規範の意味で使用
• - 荘子: 自然の理法としての理が現れ、天と結びついて天理となったり、「道」と並列的に使用。ここでは「道」が包括的概念であるのに対し、「理」は個別的概念として扱われています。
• - 韓非子: 「道」を「法」として展開するとともに、道と理との関係を規定。理が個物化・特殊化の原理であることが明確にされています。

儒家

前漢代の思想書『淮南子』において理の観念が深められ、道家の影響を受けた儒家文献の中で「窮理尽性」の説が作られました。これは後世に大きな影響を与えました。

理気説

「理気説」では、「理」は事物の法則性を表す概念であり、「気」は事物を形作り生命を与えるガス状の物質と考えられました。程頤は、気の現象する世界の奥に、秩序づける存在を措定し、これを理と呼びました。そして、この理を究明すること（窮理）が学問の要諦であるとしました。

朱子学

朱子学においては、「一物に一理あり」とし、これを「理一分殊」と称しました。朱熹（朱子）によれば、理は形而上のもの、気は形而下のものであり、それぞれ別の物ですが、互いに単独で存在できず「不離不雑」の関係にあるとされます。気は運動性を持ち、理は無為であり、気の運動に乗って秩序を与えると考えられています。

陽明学

陽明学の始祖である王陽明は、「理は気の条理、気は理の運用」という理気一体観を表明しました。

仏教

仏教における「理」は、道理・義理・条理を意味し、治める、正すなどの意味で用いられます。仏教では、現実世界をどのように認識するかが重要であり、現実を現実のままに認識することを「事」と言い、それを理論づけたり言葉に乗せることを「理」と言います。仏典はすべて理であり、釈迦がさとった内容は「事」であるとされます。この意味において、「不立文字」は事の内容は言葉にできないことを説明しています。

まとめ

このように、「理」は中国哲学において多岐にわたる意味を持ち、各思想家によって独自の解釈がなされてきました。その多様性を理解することは、中国哲学を深く理解するための重要な鍵となります。

参考文献

• - 大島晃「理」小学館編『日本大百科全書』（スーパーニッポニカProfessional　Win版）小学館、2004年2月。ISBN 4099067459

関連項目

• - 気
• - イデア
• - イデア論
• - 形相
• - 自然法
• - 法 (仏教)

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