琉球国由来記

琉球国由来記（りゅうきゅうこくゆらいき）

『琉球国由来記』は、琉球王府によって編纂された地誌であり、琉球王国の歴史、文化、社会構造を理解する上で非常に重要な資料です。1713年（康熙52年）に完成し、国王に上覧されました。この地誌は、王府が編纂した最初の体系的なものであり、その内容は多岐にわたります。

編纂の背景と目的

本書の序文「諸事由来記序」には、編纂の目的が明確に記されています。それによると、王府には典拠となる記録が不足しており、王府の儀式や公事、毎年の祭祀についての由来が不明確になっていたため、国王が臣下に調査を命じたとされています。これは、国家の運営において重要な要素であり、軽視できないものであったためです。

この「我が王」とは、当時の琉球国王である尚敬王を指します。また、本書は「琉球の『延喜式』」とも評され、その重要性が強調されています。

編纂体制

編纂の中心となったのは、旧規由来寄奉行という部署です。この部署は、1703年（康熙42年）に設立された旧記座が前身であり、本書の編纂のために臨時に設置されたと考えられています。旧記座は、各間切の番所に調査を命じ、旧事や由来に関する報告書を収集しました。これらの報告書を基に、内容を精査し、取捨選択を行い、本書が編纂されました。旧記座は、本書の完成とともに自然消滅したと推測されています。

内容構成

『琉球国由来記』は、大きく分けて前編と後編に分類されます。前編は巻1から巻11までで、王府の公事や儀式、寺社の縁起などが記録されています。後編は巻12から巻21までで、各地域の祭祀について詳細に記述されています。特に、巻5の「城中御嶽併首里中御嶽年中祭祀」と巻12以下の各處祭祀は、形式が共通していることが指摘されています。

また、巻6「国廟・玉陵」、巻9「唐栄旧記全集」、巻10「諸寺旧記」、巻11「密門諸寺縁起」の4巻は漢文で記述されており、他の巻とは文体が異なっています。このことから、編纂過程において、まず「城中御嶽併首里中御嶽年中祭祀」が作成され、これを基に各處祭祀が編纂されたと考えられています。

さらに、巻11「密門諸寺縁起」では、『琉球神道記』を参照した記述が見られ、編纂において重要な参考文献とされていたことがわかります。

研究における重要性

『琉球国由来記』は、琉球王国の歴史、社会、文化、宗教を研究する上で欠かせない資料です。王府の儀式や祭祀、各地域の旧事、寺社の縁起などが詳細に記録されており、当時の社会構造や人々の生活を知る上で貴重な情報を提供しています。また、本書の編纂過程や資料収集の方法は、琉球王府の行政システムや情報管理について知る手がかりとなります。

本書の研究を通じて、琉球王国の歴史と文化に対する理解を深めることができるでしょう。

参考文献

伊波 普猷、東恩納 寛惇、横山 重 編『琉球史料叢書 第1』井上書房〈琉球史料叢書〉、1962年6月。  ‐ 『琉球国由来記』巻1から巻11を所収。
『琉球史料叢書 第2』井上書房〈琉球史料叢書〉、1962年6月。  ‐ 『琉球国由来記』巻12から巻21を所収。
伊波 普猷『伊波普猷全集 第7巻』外間守善、比嘉実解題、平凡社、1975年6月。
横山 重『書物捜索 上』角川書店、1978年11月。
古橋, 信孝、三浦, 佑之、森, 朝男 編『霊異記・氏文・縁起』 11巻、勉誠社〈古代文学講座〉、1995年6月。ISBN 978-4-58-502050-9。

外部リンク

『琉球国由来記集』、伊波普猷文庫、琉球大学附属図書館所蔵

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