琉球民裁判所

琉球民裁判所の概要

琉球民裁判所は、沖縄がアメリカの施政下にあった時代に、琉球政府によって運営された裁判所です。この裁判所は、米国民政府布告第12号「琉球民裁判所制」によって創設され、琉球における司法制度の根幹を担いました。

当初、琉球民裁判所は、上級審として琉球上訴裁判所、下級審として巡回裁判所と治安裁判所の三層構造で構成されていました。これらの裁判所は、旧日本法（刑法、民法、民事訴訟法など）や琉球政府が制定した法律（刑事訴訟法など）に基づいて裁判を行いました。

しかし、米国の安全保障、財産、利害に関わる重大な事件については、琉球列島高等弁務官の裁量により、米国民政府が独自に運営する米国民政府裁判所に移送されることがありました。このため、琉球民裁判所の裁判権は、完全に独立したものではなく、一定の制約を受けていたと言えます。

1967年には、立法院によって裁判所法（1967年立法第125号）が制定され、翌年より琉球民裁判所は、琉球高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所という日本の裁判所制度に準じた組織へと改組されました。これにより、琉球の司法制度は、より日本の制度に近い形へと移行しました。

琉球民裁判所の沿革

琉球民裁判所の歴史は、沖縄がアメリカの施政下に入った1945年に始まります。

1945年4月1日: 米軍が沖縄に上陸し、日本の司法権が停止されました。
1946年3月1日: 占領後初の住民による刑事裁判所として、簡易裁判所が設置されました。
1946年10月1日: 簡易裁判所が廃止され、新たに区裁判所、地方裁判所、終審裁判所が設置されました。
1947年7月18日: 治安裁判所が設置されました。
1947年10月7日: 区裁判所は巡回裁判所、地方裁判所は上級裁判所、終審裁判所は控訴裁判所へとそれぞれ改称されました。
1950年8月1日: それまでの裁判所が廃止され、琉球上訴裁判所、巡回裁判所、治安裁判所が新たに設置されました。
1968年1月1日: 従来の裁判所が廃止され、琉球高等裁判所、那覇地方裁判所、那覇家庭裁判所、簡易裁判所が設置されました。これにより、琉球の司法制度は、日本の裁判所制度に沿った形へと再編されました。

各裁判所の権限

琉球民裁判所を構成していた各裁判所の権限は、以下の通りです。

治安裁判所:
刑事裁判の予審を担当しました。
比較的軽微な刑事事件の裁判を行いました。
5万B円以下の民事訴訟を扱いました。
巡回裁判所:
治安裁判所の判決に対する控訴審を担当しました。
治安裁判所の管轄外のすべての裁判の第一審を担当しました。
家庭裁判所としての機能も果たしました。
琉球上訴裁判所:
巡回裁判所の判決に対する上告審を担当しました。

参考文献

照屋栄一『沖縄行政機構変遷史 明治12年～昭和59年』照屋栄一、1984年8月15日。

関連項目

アメリカ合衆国による沖縄統治
アメリカ施政権下の沖縄の法令
琉球上訴裁判所／巡回裁判所／治安裁判所
福岡高等裁判所那覇支部／那覇地方裁判所／那覇家庭裁判所

外部リンク

* 沖縄県公文書館

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