琉球海上保安庁

琉球海上保安庁とは

琉球海上保安庁は、1971年9月に琉球政府通商産業局の外局として発足しました。その任務は、海上の安全確保を図ることであり、日本の海上保安庁に相当する役割を担っていました。職員数は46名でした。

1972年5月の沖縄返還に伴い、琉球海上保安庁は日本の海上保安庁に統合され、「第十一管区海上保安本部」となりました。

発足までの経緯

琉球政府には、海上保安業務を専門とする統一的な機関が存在していませんでした。そのため、海上における警備や救難業務は琉球警察が担当し、航路標識業務は工務交通局（後に通商産業局）が担当していました。また、水路業務については、琉球政府には担当部署がなく、日本の海上保安庁が一部を、アメリカ沿岸警備隊が一部の航路標識をそれぞれ担当していました。

沖縄の日本復帰が正式に決定したことを受け、海上保安庁へのスムーズな移管を目的として、琉球海上保安庁が設立されました。

設立準備のため、1970年10月には日本の海上保安庁から職員2名が沖縄に派遣されました。1972年1月には、それまで実施されていなかった水路測量業務のため、海上保安庁水路部から職員1名が派遣されました。さらに同年2月には、離島での急患輸送業務のために厚生局に石垣医療航空事務所（後の海上保安庁石垣航空基地）が開設され、海上保安庁職員2名が技術支援のため派遣されました。発足後には、日本の海上保安官が指導官として指導にあたりました。

一方、海上保安庁の本庁内には、同年2月1日付で第十一管区海上保安本部設置準備室が設置され、第十一管区海上保安本部の設置に向けた準備が進められました。

業務内容

救難業務

沖縄諮詢会保安部の発足以来、海上における警備救難業務は琉球警察が担当していました。琉球海上保安庁の設立後は、救難業務は同庁の所管となりましたが、警備業務は引き続き琉球警察が担当し、琉球海上保安庁の職員には司法警察権は付与されませんでした。

水路業務

琉球海上保安庁の発足前は、琉球政府のもとでは水路業務は全く実施されていませんでした。日本の海上保安庁が沖縄周辺海域で部分的に実施していたに過ぎませんでした。

航路標識業務

戦後、航路標識は全てアメリカ沿岸警備隊が管理していました。1953年に59基の航路標識が琉球政府に移管され、工務交通局海務課港政係員が巡回保守点検を行いました。琉球海上保安庁発足後は、同庁灯台課が管理を担当しました。アメリカが所管する航路標識については、アメリカ沿岸警備隊が那覇軍港に常駐して管理を続けました。

所属船舶

琉球警察本部に所属していた2隻の救難艇のうち、「おきなわ」（1970年10月竣工。日本の海上保安庁のやはぎ型巡視船と同型）が琉球海上保安庁に移管され、使用されました。もう一隻の救難艇「ちとせ」（1963年12月竣工。日本の「ひだか」型巡視船と同型）は、日本復帰まで引き続き琉球警察本部に所属し、復帰後に海上保安庁に編入され、「のばる」と改名して第十一管区海上保安本部に配属されました。

参考文献

第11管区海上保安本部編『第11管区海上保安本部10年のあゆみ』第11管区海上保安本部、1982年
照屋栄一『沖縄行政機構変遷史 明治12年～昭和59年』照屋栄一、1984年8月15日。NDLJP:9775065。

関連項目

琉球政府
琉球警察
海上保安庁
アメリカ沿岸警備隊

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