琉球郵政庁

琉球郵政庁とは

琉球郵政庁は、沖縄がアメリカの統治下にあった時代に、郵便事業および電気通信行政を担っていた行政機関です。沖縄戦で壊滅的な被害を受けた郵便事業の再建から始まり、本土復帰までの間、沖縄の通信インフラを支え続けました。

琉球郵政庁の設立と変遷

1945年8月、沖縄諮詢会に逓信部が設けられたことを皮切りに、沖縄の郵便事業は再建の道を歩み始めました。翌月には郵便の取り扱いが開始され、他の地域でも既存の郵便局が再開されました。

1950年4月1日、各群島ごとに分立していた郵政組織が統合され、琉球郵政庁が発足しました。その後、琉球臨時中央政府の発足に伴い、琉球郵政庁は内部部局の「郵政局」となり、さらに琉球政府郵政局へと組織変更されました。

しかし、1953年には郵政局が工務局・運輸局と統合され「工務交通局」の一部門となり、郵政事業の経営に支障をきたすようになりました。この状況を改善するため、1960年に郵政特別会計が発足し、1961年には建設運輸局（後に通商産業局）の外局として郵政庁が設置されました。

1960年代半ばまでは黒字経営でしたが、1968年以降は赤字に転落しました。その要因として、物価上昇に対する料金改定の遅れ、切手収入への過度な依存、労働組合の政治運動への傾倒によるサービス低下などが挙げられます。また、郵政三事業のうち、簡易生命保険事業は復帰まで実施されませんでした。

琉球郵政庁の沿革

1945年8月20日：沖縄諮詢会発足、逓信部長に平田嗣一が就任。
1945年9月4日：沖縄諸島内で肉親の安否を問い合わせる郵便物の無料取り扱い開始。
1946年7月1日：沖縄諸島内の郵便料金有料化。
1946年9月10日：沖縄諸島と本土間の郵便再開。
1947年5月15日：国際郵便再開。
1948年7月1日：初の正刷切手が発売。
1950年4月1日：全域を管轄する「琉球郵政庁」が発足。
1951年8月13日：琉球臨時中央政府郵政局となる。
1952年4月1日：琉球政府郵政局となる。
1953年4月1日：琉球政府の機構改革に伴い、工務交通局の一部門となる。
1958年9月16日：法定通貨が米ドルになったことに伴い、切手もドル表示に。
1960年7月1日：郵政特別会計制度が設けられる。
1960年11月1日：切手に英語名の「Ryukyus」が併記されるようになる。
1961年8月1日：琉球政府の機構改革に伴い、建設運輸局の外局「郵政庁」となる。
1965年8月1日：琉球政府の機構改革に伴い、通商産業局の外局「郵政庁」となる。
1972年4月14日： 尖閣諸島の南小島でアホウドリが羽根を休める風景を描いた記念切手「海洋シリーズ」第3集「海鳥と海と島」を発行。

琉球郵政庁の歴代幹部

琉球郵政庁長

初代：平川先次郎（1950年4月1日～1951年8月12日）

琉球政府郵政局長

初代：平川先次郎（1951年8月13日～1953年3月31日）

琉球政府工務交通局郵政次長

初代：宮良賢副（1953年4月7日～1958年4月20日）
2代：新城信一（1958年4月21日～1959年4月30日）
3代：照屋盛通（1959年7月1日～1959年11月13日）
4代：国吉喜盛（1959年12月1日～1961年7月31日）

琉球政府建設運輸局郵政庁長

初代：国吉喜盛（1961年8月1日～1965年7月31日）

琉球政府通商産業局郵政庁長

初代：仲本昌達（1965年8月1日～1966年3月18日）
2代：佐久本嗣善（1966年3月19日～1968年10月24日）
3代：渡嘉敷真球（1968年10月25日～1971年10月31日）
4代：宮城滋（1971年11月1日～1972年5月14日）

琉球郵政の徽章

琉球郵政の徽章は、1957年6月7日に告示され、本土の郵政省で使用されていた郵便マークと同一のものでした。

本土復帰後の郵政事業

1972年の本土復帰に伴い、琉球郵政庁は郵政省に統合され、沖縄県を管轄する地方支分部局として沖縄郵政管理事務所が設置されました。同時に、万国郵便連合（UPU）から脱退しています。

沖縄郵政管理事務所は、本土の郵政局とは異なり、貯金事務センターや簡易保険事務センターの機能も有しており、県内の貯金通帳原簿と保険証書原簿の保管事務も行っていました。また、地方郵政監察局及び地方電波監理局の機能も兼ね備えていました。

2001年の省庁再編で総務省（郵政事業は郵政事業庁）へ移管され、地方支分部局は沖縄総合通信事務所に名称変更されました。さらに2003年には日本郵政公社発足に伴い、郵政事業部門が分離され、同公社沖縄事務所を経て沖縄支社となりました。

2007年の民営化後、郵政公社沖縄支社の建物は日本郵政グループ那覇ビルとなり、日本郵便の沖縄支店やゆうちょ銀行の統括機能が入居しています。

郵便番号制度の導入

1968年に本土で導入された郵便番号制度は、1972年の本土復帰と同時に沖縄でも実施されました。1971年7月10日以降に発行された琉球郵政庁の官製はがきには、郵便番号枠が印刷されていました。沖縄県の郵便番号の上2桁は「90」とあらかじめ確保されていました。

郵政施設の変遷

沖縄本島の中心郵便局である那覇中央郵便局は、復帰と同時に一時「那覇郵便局」と名称が変更されましたが、1982年に再び元の名称に戻りました。復帰前には宮古や八重山の中心郵便局も「中央郵便局」という名称でしたが、復帰と同時にそれぞれ「沖縄宮古郵便局」「八重山郵便局」となりました。

琉球郵政庁は那覇市寄宮の那覇東郵便局内にありましたが、復帰後の沖縄郵政管理事務所も同郵便局内にありました。その後、1980年代に現在の那覇市東町に移転しました。

那覇中央郵便局は那覇市久米にありましたが、1977年に壺川の国道330号沿いに移転しました。1997年には現在の壺川駅前に移転し、地域区分局と離島を含めた中継局としての機能を果たしています。

参考文献

沖縄郵政管理事務所 編『琉球郵政事業史』沖縄郵政管理事務所、1974年3月25日。
照屋栄一『沖縄行政機構変遷史 明治12年～昭和59年』照屋栄一、1984年8月15日。

関連項目

沖縄切手
琉球政府
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