沖縄切手

沖縄切手とは

沖縄切手は、アメリカ軍統治下の沖縄で使用された切手です。一般的に「琉球切手」とも呼ばれますが、厳密には、アメリカ軍占領下の初期に発行されたものを「沖縄切手」、琉球政府が発行したものを「琉球切手」と区別することもあります。日本本土復帰に伴い、1972年 6月3日をもって効力が停止され、現在では切手収集の世界で「デッド・カントリー」切手として扱われています。

沖縄切手の定義

広義の沖縄切手（琉球切手）: 1945年のアメリカ軍占領から1972年 5月14日までの間に、琉球で発行された「琉球郵便」の文字が入った切手全般を指します。
狭義の沖縄切手: 1945年のアメリカ軍占領から1953年 6月までに、アメリカ軍統治下の沖縄（奄美群島を含む）で発行された切手です。
狭義の琉球切手: 1953年 7月1日から1972年 5月14日までに、琉球政府の郵政局（後に琉球郵政庁）が発行した切手です。初期はB円建て、後期は米ドル（セント）建てで発行されました。

沖縄切手の歴史

沖縄戦終結後、沖縄はアメリカ軍の統治下に置かれ、各地域で独自の郵便事業が始まりました。当初は戦前の切手や料金収納印が使用され、その後、各群島の民政府が独自の印を押した切手が使われました。1948年 7月1日からは、独自のデザインと「琉球郵便」の表示がある切手が発行されるようになりました。1951年に琉球臨時政府が発足し、郵便事業は琉球郵政庁によって運営され、1952年には琉球政府の管轄となりました。1958年には通貨が米ドルに変更され、切手もドル表記となりました。

沖縄切手のデザイン

琉球切手のデザインは、沖縄在住の画家やデザイナーによって制作され、沖縄の独自の文化や風俗を反映したものが多く、その美しいデザインは国内外の切手収集家から高い人気を集めました。これらの切手は、外貨獲得にも貢献しました。

沖縄切手の終焉と投機

1972年の沖縄返還に伴い、沖縄切手は使用停止となりました。特に、最後に発行された「ゆしびん」の5セント切手は、発行前から購入を求める人々で郵便局に長蛇の列ができ、社会現象となりました。復帰までに発行された沖縄切手は259種（普通・記念228種、航空30種、速達1種）に上ります。

沖縄切手の使用停止が近づくと、一部の業者が「復帰により今後発行されなくなる」と投機を煽り、沖縄切手の価値が高騰しました。業者たちは新規発行の切手を求め、郵便局前には長蛇の列ができ、中には定価の3倍もの価格で買い取る業者もいました。この背景には、琉球郵政庁が沖縄以外の収集家や切手商への新発行切手の通信販売を打ち切ったことがありました。

この投機ブームにより、一部の切手商は高額な値段で取引を行い、1958年の「守礼門復元記念」切手は、額面200円の切手が10枚シートで1万円を超える価格で販売されました。切手投機業者は、「切手評論家」や「切手コンサルタント」を名乗り、沖縄切手の高騰を正当化しようとしました。しかし、日本郵趣協会は「異常な沖縄切手投機に警告する」声明を発表し、切手投機に反対しました。協会は、ジュニア層向けの切手誌を創刊したり、「守礼門復元記念」切手の模造品を配布したりして、投機熱を冷ます活動を行いました。また、切手商の業界団体は、沖縄切手を実態に基づいた評価額で販売しました。

しかし、投機熱は収まらず、1973年5月に読売新聞が「ネズミ講切手版」と題する記事を掲載し、沖縄切手投機の真相が明るみになりました。切手投機業者は、即売会の会場を転々と変えながら高騰を繰り返し仕掛けましたが、やがて換金を求める動きが加速しました。最終的に切手投機業者が買い戻しを拒否したため、価格は大暴落し、多くの人々が損害を被りました。この事件は、自殺者や殺人事件まで引き起こす社会問題となりました。

沖縄切手のその後

一時期は異常な高騰を見せた沖縄切手でしたが、現在ではその価格は落ち着き、当時の実勢価格に近い評価額で取引されるようになっています。しかし、使用済み切手の人気が高まっており、一部には偽造消印が見つかっているという問題もあります。

記念切手とシリーズ切手

沖縄切手には、様々な記念切手やシリーズ切手が存在します。文化財シリーズ、民族舞踊シリーズ、動植物シリーズ、花シリーズ、空手シリーズ、亀シリーズなど、沖縄の文化や自然を題材としたものが多く、これらの切手は沖縄の歴史と文化を今に伝えています。