琴平急行電鉄デ1形電車

琴平急行電鉄デ1形電車について

琴平急行電鉄デ1形電車は、琴平急行電鉄が同社路線の開業に合わせて1930年に導入した小型半鋼製の電車です。この電車は主に金刀比羅宮への参拝客の輸送を目的としており、1930年の4月に坂出から電鉄琴平間の運行が開始されました。製造は日本車輌製造本店により行われ、全6両が新規に作られました。デ1形電車は、1944年に名古屋鉄道に譲渡され、その後1973年まで使用されました。

車体外観・内装

この電車は、車体長11,035mm・車体幅2,440mmの特長を持ち、リベットを使用せずに溶接工法で製造されたため、滑らかな外観が特徴的です。前方には運転台が2つ設けられ、前面は丸みを帯びた形状をしており、均等配置の3枚の前面窓も目を引きます。側面には片開きの客用扉と多くの側窓が設置され、窓は開閉可能な一段窓方式です。車体の塗装は濃茶色が使用されており、屋根上には通風器が左右に8基配置されています。

車内はロングシートのデザインで、青色系のシートモケットと白熱灯による明るい照明が印象的です。客室内にはつり革や荷棚があり、利便性も考慮されています。また、車内の快適さを向上させるために、独自の設計が施されています。

主要機器

デ1形電車は単行運転を前提に設計され、直接制御式の制御方式を採用しています。主電動機は日立製作所製の直流直巻電動機で、1両あたり2基を搭載しており、以降の運行における迅速な出発を可能にしています。台車は釣り合い梁式の設計であり、安定した走行を実現しています。

運用時の経緯

開業前の1929年には設計認可を申請し、翌年には桜木 - 電鉄琴平間の営業を開始しましたが、戦時中の金属回収令により交通機関が厳しく制限されることになりました。このため、1944年には全6両が名古屋鉄道へと譲渡され、モ180形の形式名で活躍し始めました。

名古屋鉄道では、元の設計を極力維持しつつも、必要に応じて小改造が行われ、比較的簡単な構造のため故障が少なく、利用者の支持を得ることができました。特に、戦中戦後の混乱期には運行の安定性が重視される場面で、本形式の特性が役立ちました。

名古屋鉄道後の運用

名古屋鉄道に譲渡された後、デ1形はさまざまな改良が施され、尾西線を含む他の路線で広く使用されました。1952年には居住区間を変更し、揖斐線系統に転用されました。この際、客用扉の位置や連結運転に関する改造も行われ、多くの車両が更新されていきました。

モ186は他の車両とは異なる仕様に改造され、さまざまな試行錯誤を経て運用され続けることになります。このように数回の改修と転用を経ていましたが、1970年代に入ると電動機の経年劣化や他車両からの更新によって、デ1形は徐々に運行を休止し、1973年にはその全てが除籍されることとなりました。

現在の状況

琴平急行電鉄デ1形電車は、その他の意味でも特別な存在としてその歴史の中で位置づけられています。数両が譲渡後も活躍しましたが、最終的には本形式は運行を終え、現在に至ります。それでも一部の部品や機器は他の車両に再利用されており、今でもその名を知る人々にとっては懐かしい存在となっています。

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