瑜伽神社 (奈良市)

瑜伽神社（ゆうがじんじゃ）

瑜伽神社は、奈良県奈良市高畑町の瑜伽山に鎮座する神社です。古都奈良の歴史と自然に囲まれ、訪れる人々に静寂と安らぎを与えてくれます。

由緒

社伝によれば、瑜伽神社の起源は飛鳥時代に遡ります。平城京遷都の際、飛鳥神奈備がこの地に移され、瑜伽山は「平城の飛鳥山」と呼ばれるようになりました。元々は元興寺禅定院の鬼門除けの鎮守社であり、後に興福寺大乗院が山麓に建立されると、その守護神として藤原氏などからの崇敬を受けました。

『大乗院寺社雑事記』には、明応3年（1494年）に「今宮殿」の建立に関する記述があり、これが瑜伽神社のことであると考えられています。「今宮」とは、飛鳥の元宮に対する呼称とされていますが、この由緒には異説も存在します。瑜伽神社という名称が用いられるようになったのは、比較的近年のことだと考えられています。

歴史

瑜伽神社の由緒については、いくつかの疑問点も指摘されています。

今宮について

社伝では、「今宮」は飛鳥の元宮に対する呼称とされていますが、『大乗院寺社雑事記』には、春日五所明神を勧請して祀ったものであり、鎮座地も瑜伽山ではなく西隣の鬼薗山であると記されています。また、『奈良曝』にも同様の記述が見られます。この今宮は、瑜伽神社と並んで江戸時代にも存在していたと考えられており、明治初期の大乗院解体と同時に廃絶したと考えられています。

新宮について

瑜伽山は西方院山とも呼ばれ、『大乗院寺社雑事記』には「新宮」が祀られていたことが記されています。「新宮」は、大乗院第十二代覚尊の死後に与えられた神号であるとされ、西方院山新宮社に祀られていました。しかし、新宮社の創祀時期や廃絶時期、廃絶理由などは不明です。

天満天神と稲荷社

元興寺禅定院の鎮守は高畑の天満天神であり、大乗院が当地に移ってからも、同社が鎮守となったとされています。『奈良坊目拙解』によると、天満天神内にはかつて稲荷小祠がありましたが、いつの間にか廃れていました。享保3年（1718年）に宮守が霊夢を見て稲荷小祠を再興し、同15年（1730年）に天満天神の北方に遷宮しました。稲荷神社の祭神は瑜伽神社と同じ宇迦御魂大神であり、この稲荷神社が山の地名にちなみ、後年瑜伽神社と呼ばれるようになったという説もあります。

中世城郭跡

瑜伽神社周辺は、中世の瑜伽山城、西方院山城、鬼薗山城の跡とされており、現在も広い台地と濠の跡が残っています。歴史を感じさせる景観が、神社の雰囲気を一層深めています。

境内

一の鳥居をくぐると、左手に社務所、手水舎、神符所があり、その先に長い石段が続いています。石段を少し登ると、中腹右手に飛鳥神並社と瑜伽山櫻楓歌碑があります。石段の最上部には、「瑜伽本宮」と書かれた扁額が掲げられた拝殿があり、左手には久恵比古社と猿田彦神社、右手には一言稲荷社と平城の飛鳥の万葉歌碑があります。本殿の背後一帯は「お山」と呼ばれ、大杉大明神、白玉大明神、末広大明神、子金丸明神が祀られています。

歌碑

境内には、瑜伽山の自然を詠んだ歌碑が建立されています。

瑜伽山櫻楓歌碑

春は又 花にとひこん 瑜伽の山
けふのもみちの かへさ惜しみて 良材

この歌は、江戸時代の奈良奉行であった梶野土佐守藤原良材によって詠まれました。瑜伽山が古くから桜と紅葉の名所として知られていたことを示しています。瑜伽山は奈良十六景にも選ばれており、その美しい景観は多くの人々を魅了してきました。

平城の飛鳥の万葉歌碑

ふるさとの あすかはあれと
あをによし ならのあすかを
みらくしよしも

この歌は、大伴坂上郎女によって詠まれました。万葉集にも収録された名歌であり、平城京に都が移っても、故郷である飛鳥を懐かしむ心情が込められています。

祭神

本殿：宇迦御魂大神
境内社
飛鳥神並社：瑜伽大神の和魂
猿田彦神社：猿田彦大神
久恵比古社：久延彦大神
一言稲荷社：宇迦御魂大神


瑜伽神社は、豊かな自然と歴史に彩られた、心安らぐ場所です。ぜひ一度、訪れてみてください。

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