神奈備

神奈備（かむなび・かんなび・かみなび）とは

神奈備とは、神道における信仰概念の一つで、神霊（神や御霊）が宿る御霊代（みたましろ）・依り代（よりしろ）を擁した領域のこと、または、自然環境を神体（しんたい）とする考え方を指します。具体的には、神が「鎮座する」または「隠れ住まう」とされる山や森、特徴的な岩（夫婦岩など）、滝（那智滝など）などの神域が神奈備とされます。神籬（ひもろぎ）や磐座（いわくら）も神奈備に含まれ、これらは神が降臨する場所として古くから信仰されてきました。

神奈備の語源

「カンナビ」の語源については、複数の説があります。

「神並び」説: 「カンナラビ」が転じて「カンナビ」になったとする説。
「隠れる」説: 「ナビ」は「隠れる」を意味し、「神が隠れ籠れる」場所とする説。

また、漢字表記も「神奈備」のほか、「神名備」「甘南備」など、さまざまなものがあります。

神奈備の持つ意味

神奈備は、単なる自然崇拝の対象としてだけでなく、以下のような意味も持ちます。

神域: 神が住まう神聖な場所。
常世と現世の端境: 現世と異なる世界（常世）との境界。
結界: 常世と現世を分ける結界。
禁足地: 神聖な場所として立ち入りが制限される場所。

これらの意味から、神奈備は、自然への畏敬や畏怖の念を体現する存在とも言えるでしょう。

神奈備と自然保護

神奈備は、自然を手付かずに残すという観点から、自然環境保護の重要性を示す事例としても注目されています。里山やその周辺の文化を伝える貴重な存在であるだけでなく、固有の土壌細菌が新薬開発のきっかけとなることもあります。また、世界中の研究者が自然環境学の研究のために訪れる場所にもなっています。

神社神道との違い

現在の神社神道では、神体は「社（やしろ）」であり、神奈備とは呼ばれません。しかし、神社神道も元々は自然崇拝から派生したものであり、多くの神社では、祭神とは別に、神木や霊石、鎮守の森といった自然そのものを神体として祀っています。古い神社では、拝殿や本殿すらなく、神奈備そのものを祭神とする場合もあります。

『出雲国風土記』に記載された神奈備

『出雲国風土記』には、以下の4つの神奈備山が記載されています。

意宇郡の神名樋野: 現在の松江市にある茶臼山に比定されます。
秋鹿郡の神名火山: 一般的には松江市の朝日山に比定されます。
楯縫郡の神名樋山: 出雲市の大船山に比定されます。
出雲郡の神名火山: 出雲市の仏経山に比定されます。

まとめ

神奈備は、神道における重要な概念であり、自然崇拝の原点を示すものです。神が宿る場所としてだけでなく、自然と人間の関係性を考える上でも、重要な存在と言えるでしょう。現代においても、その自然環境は保護され、次世代に受け継がれていくべきものです。

関連事項

神代・上代
古神道
神籬・磐座
神体・依り代
鎮守の森・神木
神体山・山岳信仰
かんなぎ
神道の緑性
* 三輪山

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