瓜生保

瓜生保（うりゅう たもつ）

瓜生保は、南北朝時代に越前国（現在の福井県）で活躍した武将です。通称は判官と称しました。彼の生涯は、当時の混乱した社会情勢を背景に、複雑な政治的動向と、一族の分裂、そして壮絶な戦死によって彩られています。

生涯

瓜生保は、現在の福井県南越前町阿久和にあたる越前国南条郡飽和村の出身です。当初、新田義貞の配下として、加賀大聖寺で北条得宗家一族の名越時兼を討ち取るという功績をあげました。しかし、延元元年（1336年）10月、新田義貞が越前に下向すると、彼を出迎えたものの、間もなくして義貞の下を離反し、一時的に足利尊氏に味方する動きを見せます。

『太平記』によると、この離反は尊氏が送った偽の綸旨に騙されたためとされています。しかし、この説の真偽については疑問が残されており、実際の離反の理由は不明な点が多いです。足利方に与した瓜生保は、斯波高経や高師泰の軍勢に所属し、金ケ崎城を攻めるなど、新田義貞と敵対しました。この行動は、彼の弟たちの賛同を得られず、瓜生一族は分裂することとなります。

その後、11月になると、尊氏から送られた綸旨が偽物であることを看破したとされています。弟の義鑑房や照らが、義貞の甥である脇屋義治を擁立し、越前杣山城で挙兵すると、保もこれに呼応。斯波の軍から志を同じくする武将数名と共に脱走し、弟たちと合流して南朝に帰参しました。

南朝への復帰の背景には、宇都宮泰藤と天野政貞との逸話が伝えられています。彼らが、「三つ鱗の家紋の北条氏は二引両の家紋の足利氏に滅ぼされた。ならば、二引両の足利氏は一引両の家紋の新田氏に滅ぼされるのが筋だろう」と語ったと言われています。さらに、天野政貞は『周易』を引用し、「一引両」の「一」は「陰にも一なし、陽にも一なし」であり、新田軍は無敵であると熱弁をふるったとされます。しかし、この逸話は創作である可能性が高いとされています。

南朝に帰参した瓜生保は、越前で北朝勢と戦い、国府西側にあった新善光寺城を落とすなど、師泰、高経の軍を度々破り、戦局を優位に進めました。しかし、里見時成に随行して金ケ崎城の救援に向かう途中、今川頼貞の待ち伏せにあい、時成や弟の義鑑房と共に戦死しました。彼の戦死した時期については、正月説と8月説の両方が存在します。

瓜生保戦死の地碑

瓜生保が戦死したとされる敦賀市樫曲地区には、「瓜生保戦死の地碑」が1961年（昭和36年）に敦賀市指定史跡として建立されています。また、そこから山に上がった場所には、瓜生氏の末裔が1911年（明治44年）に建てた墓があります。これらの史跡は、瓜生保の足跡を今に伝える貴重なものです。

追贈と合祀

大正4年（1915年）、瓜生保は、その功績を称えられ従四位を追贈されました。また、敦賀市金ヶ崎町の絹掛神社には、弟の義鑑房をはじめ、南朝方として共に戦い散った新田義顕、里見時成、気比氏治、気比斉晴らと共に合祀されています。これらの事実は、彼が後世にわたり敬意を持って記憶されていることを示しています。

瓜生保の生涯は、南北朝時代の激しい動乱の中で、自身の信念を貫き、戦い抜いた武将の姿を私たちに伝えます。彼の足跡は、史跡や神社に残り、今日まで語り継がれています。

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