綸旨

綸旨（りんじ）について

綸旨とは、平安時代の日本において、天皇の命を受けて蔵人所が発行する命令文書を指します。この用語は元々「綸言の旨」の略で、天皇の意志そのものを示していましたが、時代が進むにつれて、綸旨は天皇の口宣を基に蔵人が作成した公文書としての性格を持つようになりました。また、御綸旨（ごりんじ・ごりんし）とも称されます。

概要

綸旨は、正式な手続きが必要とされる詔書や勅書とは異なり、手続きが簡略化されている点が特徴です。蔵人が「綸言は以下の通り」といった形式で自らの名義で発行し、天皇の意を伝える役割を果たしました。従来の詔勅に比べて、より非公式な性格を持ちつつも、内容の多くは政治や軍事に関わるものであり、結果として公文書としての性質も帯びていました。

重大な法令などは依然として正式な詔書や勅書として発給されていましたが、綸旨は特定の相手に向けた命令や臨時の使者からの命令として発行されることが多かったです。例えば、特定の木地師に対して地域の山林を伐採する許可を与える内容の綸旨も存在しました。

歴史的背景

綸旨に関する最初の記録は、1028年（万寿5年）4月12日に仁海に宛てた後一条天皇のものとされています。この文書は醍醐寺三宝院所蔵の『祈雨日記』に保存されています。その後、院政が廃止された後醍醐天皇は、綸旨を院宣に代わる文書と捉え、建武年間から南北朝時代にかけて多くの綸旨が発出されました。これらの綸旨は当時の政治状況を考察する上で重要な史料とされています。

しかし、偽造も問題視されるようになり、二条河原落書には「此頃都ニハヤル物　夜討　強盗　謀綸旨…」といった記述も見られ、綸旨の信憑性が問われる事態も発生しました。

用紙の変遷

後の時代には、発行に必要とされる用紙の製造に高度な技術が求められ、また経費も高くつくため、繊細な白紙の使用は減少し、中古紙から作られる薄墨紙（宿紙/漉返紙）が用いられるようになりました。この薄墨紙の使用は、綸旨発行の際の慣例として定着し、綸旨自体を「薄墨綸旨」と呼ぶこともありました。

ただし、天皇からの指示で蔵人以外の官人（弁官など）が発行する際には、薄墨紙は使われないこともありました。

結論

綸旨は、天皇の意志を伝える重要な文書として日本の歴史において特別な役割を果たしてきました。特に、政治的な内容が多く含まれているため、綸旨そのものが公文書として扱われる傾向にありました。また、その作成や発行に関する歴史的経緯からも、当時の日本の政治体制や文化を窺い知ることができます。

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