瓦版

瓦版（かわらばん）とは

瓦版は、江戸時代の日本において広く用いられた、ニュース性と速報性の高い印刷物を指します。これらは、天変地異や大火、心中事件といった庶民の関心事を中心に報じるものであり、主に木版で印刷されていました。瓦版は、街中で読み上げながら販売されるスタイルから「読売」とも呼ばれています。特に、古い形式の瓦版は、粘土に文字や絵を彫り込んで焼き上げられたことから、その名が付けられました。

起源と発展

最初の瓦版は1615年の大坂夏の陣の結果を伝えるものであり、現存する瓦版として『安部之合戦之図』と『大坂卯年図』が知られていますが、当時のものだと確証する直接的証拠は残っていません。瓦版は通常、挿絵を中心にした説明文を添えており、形状は様々で、一枚の木版印刷や二つ折りの半紙を使用して作られました。これらは事件が起きるたびに街頭で拾い読みされており、「読み売り」や「辻売りの絵草紙」とも呼ばれました。

1673年には出版に関する規制令が出され、この中で「噂事」や「人の善悪」に関する内容が制限され、瓦版もその対象となることが示されています。続いて1684年の町触では、さらに具体的に「当座のかわりたる事」の出版が禁止され、辻や橋の近くでの販売は処罰の対象とされました。享保改革が行われた頃、特に好色物とされる内容は厳しく規制されましたが、善行や忠孝をテーマにしたものは推奨されました。

市場の様子

街頭での販売に加え、露店や絵草紙店でも売られていました。価格はサイズによって異なりますが、江戸時代を通じて3文から4文が一般的でした。明治時代に入ると、新聞や雑誌の普及に伴って瓦版の人気は衰えましたが、需要は残り続け、最終的には明治20年代まで発行されていました。

内容としては、妖怪や新奇な事件についての娯楽的な内容も多く含まれていました。特に心中や仇討ちといった好色や衝撃的な事件が好まれました。吉凶の予言や神仏の奇跡といったテーマも人気を集めており、多くの瓦版は一枚摺りの形式で発行され、その中には浮世絵師による絵が描かれたものも存在しました。これらは無許可で発行されることも多かったのですが、その売上は一定の信頼と人気を持っていました。

瓦版の demise と 現代の影響

天保の改革が施行された1820年代には、瓦版が大量に出版されるようになりました。1855年の安政江戸地震の際には、この震災に関する詳細な情報を提供する瓦版が発行され、幕府が設置した救護施設の位置なども記載されていました。江戸時代末期にも、大名行列に向けて瓦版が売られる風景は名物として知られ、一般市民の間でも広がりを見せました。

近代初期においてもマスメディアとしての役割を果たし、1885年の大阪洪水では、『洪水志』に石版画を取り入れて提供されました。このように、瓦版は当時の情報伝達手段の一つとして非常に重要な役割を果たしていました。現在においては、瓦版という言葉は告知や情報報告形式の一例として用いられることが多く、当時の影響が今でも続いていることが伺えます。

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