町触

町触（まちぶれ）についての詳細

江戸時代、町人に対して出された法令の一つである「町触（まちぶれ）」は、当時の社会の秩序を維持するために重要な役割を果たしました。その内容は多岐にわたり、江戸の町中での生活に深く関わっていました。今回の記事では、町触の概要、伝達方法や意義について詳しく説明します。

町触の種類

江戸の町に出される法令は大きく「惣触（そうぶれ）」と「町触」の2種類に分かれます。惣触は老中から発せられるもので、広範囲に及ぶ指示が含まれます。一方、町触は町奉行が独自の権限で発するものです。惣触では「書付」が提示され、文中には「御書付」と記されることが特徴です。市中で生活する神職や陰陽師などは町奉行の支配下にはないため、惣触は寺社奉行が取り扱い、町触は町奉行が配信します。このため、惣触と町触は別々の経路で伝達される必要がありました。

伝達の仕組み

町触は、町奉行、町年寄、名主、月行事、そして町人といった順に伝わります。触の文案が作成されると、町奉行が町年寄を呼び出し、その内容を伝えます。町年寄は、名主や月行事を召集し、さらに名主・月行事は町内の家主に伝える役割を果たします。最終的に、家主が店子にこの内容を口述する形で、町中に広まるのです。この伝達方法は、明暦の大火後の17世紀半ばから18世紀初頭に確立され、町奉行が権限を強化する過程で必要になりました。

伝達は書面または口頭で行われることが通常ですが、口頭の場合でも通常は覚書が渡されます。この覚書は「口達書（こうたつしょ）」として知られています。

町名主と定式町触

町名主は町ごとに触の周知徹底を担当しており、名主は触を受け取った後、支持する町で連判証文を取り、町年寄の役所に納めていました。享保6年（1721年）以降は、これらが一冊にまとめられる取り決めがなされました。さらに、寛文年間では江戸を北・南・中に分け、小口の町々を通じて伝達されました。

明治時代の資料によれば、当時は30通の触書を作成し、南北・中の3口に分けて、町名順に町の番屋へ送付するような運用がされていました。町年寄は町奉行から触を受け取るだけでなく、毎年定期的に同じ内容の町触を発行する責任も抱えていました。これを「定式町触（じょうしきまちぶれ）」と呼びます。

町触の掲示と重要性

特に重要な町触は高札場（こうはくば）に掲げられ、江戸市内には「大高札場」と呼ばれる6か所が設けられました。ここではキリシタン禁令や火付の密告など、重要な内容が掲示されていました。その他にも35カ所の高札場が存在し、それぞれに関連性のある町触が記されていました。口頭で伝えられた内容を忘れないために、木戸や番屋、路地、名主宅の前に掲示されることもあったとされています。

まとめ

町触は江戸時代の町人生活において不可欠なものであり、伝達の仕組みや掲示の重要性によって、社会の秩序を保つために大きな役割を果たしました。この法令は、当時の生活や文化、社会の法体系を知るための大切な資料ともなっています。

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