甘棠院

甘棠院（かんとういん）

甘棠院は、埼玉県久喜市本町7丁目に位置する寺院で、歴史的な背景を持つ場所です。この寺は、第2代古河公方の足利政氏によって1519年（永正16年）に設立されました。寺院の山号は「永安山」といい、臨済宗円覚寺派に属しています。

歴史的背景

足利政氏は、隠退後に自身の館を寺院へと改め、息子の貞巖を開山に迎えました。その後、政氏の家臣たちによって寺院は守られましたが、天文17年（1548年）には火災により建物が消失してしまいました。再建は翌年から始まり、1552年には新たに落成しました。政氏の後、歴代の古河公方たちの葬儀も甘棠院で執り行われるようになったと伝えられていますが、第3代足利高基の葬儀に関する記録は残っていないため、詳細は不明です。

近世には、徳川幕府からも朱印地を与えられ、格式ある寺院としての地位を保ちました。さらに、天明2年（1782年）には再建作業が行われ、昭和44年（1969年）には本堂や庫裡が大改修されて現在の形となりました。これまでの住職は円覚寺や瑞泉寺と深い関係を持っていました。

甘棠院の位置はかつて大字久喜本字馬場と呼ばれ、周囲より高い場所にあります。周囲の環境としては、東西は低地で、南側には久喜の旧市街地が広がり、北側にはかつての湿地帯が存在していました。また、甘棠院の東には末寺である香雲院があったものの、現在は廃寺となってしまいました。甘棠院の名称は足利政氏の法号に由来し、彼の墓所がここに存在することも特徴的です。

境内の見どころ

甘棠院の境内には本堂や墓地、梵鐘、足利政氏の墓があります。また、境内の南側と西側には水堀跡が残されています。特に境内の井戸は質の良い水が湧き出ており、地元の酒蔵で日本酒の醸造に用いられています。北側の養護老人ホーム跡地は甘棠院史跡公園として整備され、南側には「甘党院児童遊園」という小さな公園があります。この公園内には山門や庚申塔も設けられています。

文化財

甘棠院には多くの重要文化財や美術品が集められています。国に指定された重要文化財としては、「紙本着色伝貞巖和尚画像」があり、また、重要美術品に「銅製九曜菊散双雀鏡」が含まれ、これは政氏の夫人からの遺品です。その他にも、埼玉県指定の文化財として「絹本着色足利政氏像」などがあり、歴史的な意義を持っています。

アクセス

甘棠院へのアクセスは便利で、久喜駅からのバスや徒歩での移動が可能です。朝日バスや大和観光バスが利用でき、いずれも駅から近い距離にあります。

附近には瑠璃山光明寺や千勝神社、久喜市立本町小学校といった関連スポットも多く、観光にも適した立地です。甘棠院の歴史や文化に触れながら、地域の魅力も堪能できるでしょう。

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