庚申塔

庚申塔（こうしんとう）について

庚申塔は、中国から伝わった道教に由来する庚申信仰に基づいて建立される石塔で、庚申塚とも呼ばれています。この石塔は、庚申講を3年にわたって18回開催した際の記念として多くの場合建てられます。塔は、庚申信仰に基づく供養とともに建立されることが特徴で、そのため庚申供養塔とも称されることがあります。

庚申待と信仰

庚申待と呼ばれるこの信仰体系は、人間の体内に棲むとされる三尸虫という虫が、庚申の日の夜に眠っている間にその人の悪事を天皇に告げてしまうという考えに基づいています。人々はこの影響を避けるため、庚申の日の夜は自己を戒めるために通夜をしたり、天帝や猿田彦神、馬頭観音、青面金剛を祀り、様々な勤行や宴会を行います。

庚申塔に刻まれるデザインには多様性があり、特に「見ざる、言わざる、聞かざる」という三猿の姿が多く見られます。この三猿は申を象徴し、地域の名前や、庚申講に関わる人々の名前が塔に彫り込まれることが一般的です。仏教においては、青面金剛が庚申の本尊とされ、神道では猿田彦神がその対象とされます。また、庚申塔は街道沿いに設置されることが多く、道標が刻まれることもあります。地域によっては、村境にルーツを持つ塞神の役割も果たすことがあります。

日本各地の庚申塔の分布

庚申塔は日本の沖縄県を除くほぼ全域に分布しており、地域ごとに建立数や形状に違いが見られます。関東地方では比較的多くの庚申塔が建立されている一方で、庚申信仰の重要な拠点である京都や大阪などの関西地方では、その数は少なくなる傾向があります。

現存する中で最古の庚申塔は埼玉県で見られる庚申板碑で、文明3年（1471年）の作品です。また、青面金剛の刻像としては福井県にある正保4年（1647年）のものが最古とされています。奈良東大寺が所有する鎌倉時代の木像青面金剛もその重要な文化財の一つとされています。

歴史的背景

庚申塔の建設が盛んになるのは、江戸時代初期からで、特に寛永期以降、多くの塔が建立されました。初期の庚申塔には青面金剛や三猿の像だけでなく、阿弥陀や地蔵などが彫られていましたが、次第に青面金剛が主尊として選ばれるようになりました。江戸中期以降は、文字のみを彫る形式が増えていきます。

兵庫県豊岡市但東町では、18世紀から20世紀初めにかけて、77基もの石造庚申塔が確認されています。しかし明治時代に入ると、政府は庚申信仰を迷信とみなし、多くの庚申塔が撤去されることになります。その後の高度経済成長期には、さらに庚申塔の多くが移転や撤去され、現在残存しているものの多くは寺社の境内や私有地に保護されているものや、交通量の少ない場所に設置されていたため残ったものです。

日本の田舎町を訪れると、今でも道の交差点や村の入り口などに「庚申」と刻まれた石塔を見ることができ、その信仰の深さをうかがわせます。

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