生き甲斐

生き甲斐（いきがい）とは

生き甲斐とは、「生きる甲斐」すなわち「生きることの喜び・張り合い」「生きる価値」を意味する日本語の語彙です。単なる生活の糧を得るだけでなく、人生を豊かに彩る心の拠り所となるものです。

海外での広がり

長寿地域「ブルーゾーン」の研究で知られるダン・ベットナーが、沖縄の長寿の要因の一つとして「生き甲斐（ikigai）」を紹介したことで、2000年代以降、欧米でも広く知られるようになりました。現在では、個人の幸福やウェルビーイングを考える上で重要な概念として認識されています。

生き甲斐の定義

「生きがい」には明確な定義はありませんが、多くの研究者によって様々な側面から考察されています。

島崎敏樹 は、生きがいを「居がい（仲間と共に生きること）」と「行きがい（自ら進むこと）」の2つに分けました。
谷口幸一・佐藤眞一 は、生きがいを「対象」「プロセス」「感情」「自己実現」「対人関係」の5つに分類し、多角的に捉えています。
原千恵子・中島智子 は、生きがいを「①生きる価値や意味をもたらすもの、②主観的な幸福感、③主体的な努力で得られる充実感」と定義づけました。
神谷美恵子 は、生きがいの複雑なニュアンスは日本語独特のものであり、外国語に訳す際には「生きるに値する」といった表現になるとしています。また、生きがいには「生きがいの対象」と「生きがいを感じる精神状態」の2つの意味があると指摘しました。
近藤勉 も、生きがいと生きがい感を区別し、生きがいの対象が生きがい感に影響を与えることを指摘しています。
井上勝也 らは、生きがいを社会的な視点から「社会的生きがい（ボランティア活動など）」「非社会的生きがい（信仰など）」「反社会的生きがい（復讐心など）」の3つに分類しました。

このように、生きがいは多面的で、その定義や捉え方は人によって異なります。

ベン図による表現

「ikigai」の概念は、しばしばベン図として表現されます。これは、「自分の好きなこと」「得意なこと」「社会が求めていること」「お金になること」の4つの要素が重なる部分に生きがいを見出すという考え方を示しています。

老年期における生き甲斐

老年期に関する研究では、生きがいが重要な役割を果たしています。一般的に老年期は喪失の時期と捉えられがちですが、実際には多くの高齢者が生きがいを持ち、充実した日々を送っています。高齢者にとって、生きがいは老いや喪失感への抵抗力となります。ただし、高齢者の生きがいは失われやすく、変化しやすいという特徴もあります。

健康との関連

近年の研究では、生きがいを持つことが、認知機能や幸福感の向上に繋がり、健康状態を改善することが示唆されています。生きがいは、心身の健康を維持するために重要な要素の一つと言えるでしょう。

参考文献

『Ikigai: The Japanese secret to a long and happy life』 Héctor García, Francesc Miralles (2016)
『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』 エクトル・ガルシア, フランセスク・ミラージェス (2017) エクスナレッジ社
『IKIGAI: 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』 茂木健一郎 (2018) 新潮社
神谷美恵子『生きがいについて』みすず書房 (1980) ISBN 4622006316
伊勢真理絵、中野靖彦「老人の居場所と生きがいについての一研究」『愛知淑徳大学教育学研究科論集』第5号、愛知淑徳大学大学院教育学研究科論集編集委員会 (2015)

関連項目

自律
ブルーゾーン
人生の意義（meaning of life）
ジョワ・ドゥ・ヴィーヴル（生きる喜び）

外部リンク

Dan Buettner: How to live to be 100+ - TED
ダン・ベットナー：100歳を超えて生きるには - TED
『生きがい』 - コトバンク

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