生島五郎兵衛

生島五郎兵衛：明治期の兵庫を代表する資産家

生島五郎兵衛は、明治時代から昭和時代初期にかけて兵庫県で活躍した、名を知られた資産家です。1868年（明治元年）4月26日、兵庫県有馬郡大沢村で上西文右衛門の次男として生まれました。その後、生島家の養子となり、家督を相続、名を百太郎から五郎兵衛と改めました。

生島家は代々神戸の地で繁栄した家系であり、古くから酒造業や海運業を営み、兵庫における有力な豪商として知られていました。五郎兵衛の養父である先代の五郎兵衛は、元町の醸造場を宅地に転換し、商業から土地家屋の賃貸経営へと事業を転換。確実に資産を築き上げていったと伝えられています。

五郎兵衛自身は土地家屋貸付業を営み、高い信用力と豊富な資産を築き上げました。1922年と1928年の『商工資産信用録』には、その高い信用度を示す記録が残っています。同書において、五郎兵衛は高い信用格付け（Aa）を獲得し、その財産規模も相当なものであったことがうかがえます。貴族院多額納税者議員選挙の互選資格を持つほど、地域社会における影響力も大きかったといえるでしょう。

私生活では、書画、骨董、読書を趣味としていたとされ、教養豊かな人物であったことが伺えます。神戸栄町通に邸宅を構え、中山手通にも別宅を所有していたと記録されています。宗教は真宗であったと伝えられています。

家族については、妻のスヘ（岩崎清平の妹）、二男の勝次、三男または四男の嘉蔵、そして五男をもうけています。勝次と嘉蔵は地家主として家業を継承したとされています。また、生島家には養子もおり、その子孫も繁栄を続けました。親族には、同じく資産家として知られた生島五三郎（資産家、地家主）や、検事の生島五三郎など著名な人物がいます。

五郎兵衛の没年は不明ですが、彼の生涯は明治から昭和初期にかけての兵庫県の経済発展と深く結びついています。土地家屋の賃貸経営を通して、地域の経済に貢献しただけでなく、多額納税者としての社会的な責任も果たしていたと考えられます。また、生島家という歴史ある家系の後継者として、その家業を維持発展させた功績も大きいといえるでしょう。

生島五郎兵衛に関する記録は、数々の参考文献に散見されます。『帝国名望家大全』『現代兵庫県人物史』『人事興信録』『商工資産信用録』『新興日本名士録』『日本紳士録』『兵庫県人名鑑』『大衆人事録』など、様々な文献から、彼の生涯と業績、そして生島家の歴史を紐解くことができます。これらの文献は、当時の社会状況や経済状況を知る上で貴重な資料であり、生島五郎兵衛という人物像をより深く理解するのに役立ちます。彼の残した功績は、現代においても兵庫県の歴史を語る上で重要な要素の一つとなっています。

生島五郎兵衛という一人の人物を通して、明治から昭和初期にかけての兵庫県の社会、経済、そして人々の暮らしの一端を垣間見ることができるでしょう。彼の生涯は、成功した資産家としての物語であると同時に、その時代を生き抜いた一人の人間としての物語でもあるのです。

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