用法基盤モデル

用法基盤モデルとは

用法基盤モデル（Usage-Based Model）は、認知言語学や認知文法で用いられる概念で、言語の構造が実際の言語使用によって形成されるという考え方を表現しています。このモデルは、ロナルド・ラネカーによって提唱され、言語を規則やレキシコンの体系ではなく、実際の使用に基づいて理解することに重きを置いています。

言語の使用と体系

従来の言語理論では、言語は定義されたルールや語彙から成っていると考えられがちですが、用法基盤モデルでは、普段の言語使用がその定着度や慣用度に影響を与え、言語体系の形成に寄与するとされます。つまり、このモデルはボトムアップ的アプローチを重視し、認知主体の言語活動がどのように言語システムに影響をもたらすのかを探求しています。

普遍文法とその対立

用法基盤モデルの特徴の一つは、「普遍文法」仮説に依存しないことです。普遍文法は言語に対する天与の能力を前提としていますが、このモデルは使用の観点から言語の特性を説明します。具体的には、Bybeeによる研究では英語の過去形に関連する事例が示されています。この研究では、使用頻度の高い動詞は不規則活用が残り、使用頻度の低い動詞に関しては規則的な形に置き換わることが観察されています。

先行研究との関連

用法基盤モデルと同様の考え方は、言語学の歴史の中でも存在しています。例えば、比較言語学では社会的要因や類推、借用が言語変化に及ぼす影響が長い間論じられてきました。また、日本の言語学においても、1950年代から「計量国語学」としての研究があったことは特筆すべき点です。さらに、構造主義言語学も用例から始めるアプローチを採用しており、言語使用との関係性を重視していました。

モデルの現在における意義

用法基盤モデルは、言語を「言語ユニットが組織的に構造化された実体」と捉え、構文文法やコーパス言語学と親和性を持つ点で重要な理論です。実際の言語使用から得られるデータをもとに、言語システムを分析するこの手法は、今後の言語学研究においても有用であると考えられています。

まとめ

全体として、用法基盤モデルは言語がどのように使用され、変化し、体系化されるかを理解するための重要な視点を提供します。言語研究における歴史的背景や先行研究との関連を浮き彫りにすることで、今後の研究の基盤を築くと共に、言語の多様な側面について深い考察を促します。

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