田中健藏

田中健藏（たなか けんぞう）は、1922年11月7日に東京で生まれ、2015年2月11日に亡くなった日本の医学者です。専門は病理学と外科学であり、九州大学の第17代総長を務めました。彼の生涯は、医学研究、教育、そして地域社会への貢献という多岐にわたる活動で彩られています。

生い立ちと学歴

田中健藏は東京市日本橋区で生を受けましたが、関東大震災後に長崎県佐世保市に移り住み、そこで育ちました。旧制長崎県立佐世保中学校、旧制佐賀高等学校を経て、1946年に九州大学医学部を卒業しました。その後、九州大学医学部の外科学教室に入局し、医学研究の道に進みます。1948年には九州大学大学院の特別研究生前期を修了、1951年に医学博士号を取得しました。

研究者、教育者としてのキャリア

九州大学では、1949年に医学部助手、1953年に講師、そして助教授と着実にキャリアを重ねました。1960年にはフルブライト・プログラムでハーバード大学医学部に留学し、最先端の研究に触れました。1963年に九州大学医学部教授に就任し、後進の育成にも力を注ぎました。1975年には九州大学医学部長に就任し、大学運営にも携わるようになります。

九州大学総長、社会活動

1981年、田中健藏は九州大学総長に就任し、国立大学協会理事も兼務しました。その後も、大学基準協会理事、産業医科大学理事、文部省大学設置審議会委員など、教育関連の要職を歴任しました。また、西日本国際財団理事、アジア太平洋博覧会テーマ委員会委員長、九州・山口地域企業育成基金理事など、地域社会の発展にも尽力しました。

福岡県知事選への挑戦

1986年、田中健藏は福岡県知事選挙に自由民主党推薦で出馬することを表明しました。当時、現職の福岡県知事であった奥田八二も九州大学出身の学者であり、田中は以前奥田に「学者人生を全うした方が良い」と諭したことがありました。しかし、田中が出馬を表明したことで、奥田は逆に二期目の立候補を決意し、結果として1987年の福岡県知事選挙で田中は落選しました。この選挙戦は、学者出身の二人が県知事の座を争うという異例の展開となりました。

その後の活動

知事選落選後も、田中健藏は多方面で活動を続けました。九州厚生年金病院顧問、福岡日英協会常任理事、文部省大学審議会大学教育部会長などを歴任しました。1989年以降は、文部省中央教育審議会委員、総合研究大学院大学運営審議会委員、九州交響楽団理事長、九州システムアカデミー代表取締役社長など、教育、文化、産業の分野で幅広く貢献しました。また、1990年代には、福岡都市圏ボーイスカウト振興会会長、九州学園理事、福岡歯科学園理事長、日本私立大学協会理事など、様々な団体の要職を務めました。

1996年には、長年の功績が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。その後も、九州フィンランド協会会長、福岡市総合図書館館長、社会福祉法人桜花会理事長、日本会議福岡会長などを務め、幅広い分野で社会貢献を続けました。2007年には全国日本学士会アカデミア賞を受賞しています。

田中健藏は、医学研究者、教育者としてだけでなく、地域社会の発展にも大きく貢献した人物でした。彼の多岐にわたる活動は、多くの人々に影響を与え、その功績は長く記憶されることでしょう。没後、叙従三位が贈られました。

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