田中吉興

田中吉興は、江戸時代前期に活躍した大名であり、筑後柳川藩の初代藩主である田中吉政の三男として生まれました。

当初、長兄の吉次は父である吉政との不和が原因で廃嫡され、次兄の則政も病死したため、本来であれば吉興が家督を継ぐ立場にありました。しかし、吉興自身が病弱であったため、弟の忠政が後継者となり、第2代筑後国主となりました。

その後、忠政から3万石を分与され、現在の福岡県久留米市田主丸町村島に居館を構えました。この頃に田主丸の町並みが形成されたと考えられています。

元和6年（1620年）に忠政が亡くなると、後継者がいなかったために柳川藩は無嗣断絶となりました。その後、吉興は近江国野洲郡、三河国田原、上野国新田などで合計2万石を与えられ、大名としての田中家の名跡を継承しました。

吉興には実の男子がいなかったため、元和8年（1622年）8月に徳川家の譜代家臣である菅沼定盈の八男を娘婿として迎え、田中吉官と名乗らせて家督を譲りました。吉官は江戸幕府で小姓頭を務めましたが、元和9年（1623年）9月に部下の罪に連座して除封され、後に旗本として再起用されました。

なお、田中一族には、父・吉政の弟である田中兵庫助氏次の系統があり、この系統は肥後細川藩士として続いていました。しかし、吉政と氏次は不和であったためか、柳川の田中本家が断絶した際や、吉興に後継者がいない状況においても、養子を送ることはありませんでした。

寛永6年（1629年）に、田中吉興は生涯を閉じました。

もう一度検索