田中宗一郎

田中宗一郎：音楽批評から波紋まで

1963年生まれの田中宗一郎氏は、日本の音楽シーンに多大な影響を与えた音楽評論家、DJです。立教大学卒業後、広告代理店勤務を経て、音楽雑誌『rockin'on』副編集長、そして自身の雑誌『snoozer』(2011年廃刊)編集長を歴任しました。現在はclub SNOOZERを主宰し、the sign magazineのクリエイティブ・ディレクターも務めています。愛称はタナソウ、宗さん。

熱狂とシニシズム：独自の音楽批評

田中氏の音楽批評は、アーティストへの並々ならぬ熱狂と、時にシニカルでブラックユーモアに富んだ表現が特徴です。特にレディオヘッドへの深い愛情は有名で、初期から取材を重ね、活動休止中のトム・ヨークへの単独インタビューを『snoozer』に掲載するなど、その関係性は他に類を見ません。あるレディオヘッドのアルバムレビューでは、「助けて」という単語を繰り返し用いる、前代未聞の表現も披露しています。

その音楽知識は深く、ロック、ポップスからテクノ、エレクトロニカまで、幅広いジャンルを網羅します。1950～60年代のオールディーズ・ポップスを最も愛好しており、楽曲のキー、コード、リズムパターン、ミキシングといった専門的な視点を取り入れたレビューを展開することで知られています。近年はその傾向がさらに強まっていると言えるでしょう。

一方で、『snoozer』では産業ロックやヴィジュアル系バンドを大きく取り上げることは少なく、ロキノン系とは異なる独自の視点でアンダーグラウンドシーンにも光を当ててきました。その一方で、ベテランミュージシャンのインタビューやバンド再結成の記事を扱うことは稀でした。

多彩な活動と物議を醸す発言

作曲を趣味とし、かつては音楽活動も行っていた田中氏。親交のあるくるりの岸田繁氏に楽曲を批評された経験も持ちます。両者の関西弁でのやり取りは、音楽界の興味深いエピソードの一つと言えるでしょう。

また、スヌーピーやキャンディーズ（特に伊藤蘭）を好むなど、その人物像は多面的です。「渋谷系」(自称)としても知られており、1990年代の音楽ムーブメントに深く関わった人物の一人と言えるでしょう。

しかし、彼の経歴には物議を醸す一面も存在します。過去には、音楽情報サイト『ナタリー』に関する記述で事実と異なる内容を掲載し、謝罪に追い込まれたことがあります。さらに最近では、自身のXアカウントで過去の万引き経験を告白し、犯罪行為を正当化するような発言が批判を浴びました。

多数のアーティストとの関わり

田中氏は数多くのアーティストの日本盤ライナーノーツを手掛けてきました。その中には、レディオヘッド、アッシュ、R.E.M.、オアシス、ザ・クラッシュ、スピッツ、SUPERCAR、ベックなど、世界的にも有名なアーティストが含まれています。これらのライナーノーツは、彼の独自の音楽観と深い知識を反映した、貴重な資料となっています。

結論

田中宗一郎氏は、熱狂的な音楽愛と深い知識、そして時に物議を醸す発言で知られる、唯一無二の音楽評論家です。彼のキャリアは、日本の音楽史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。その独特な視点と表現方法は、今後も音楽ファンの間で議論を呼ぶことでしょう。 彼の活動は、ラジオ番組出演や著書『2010s』(宇野維正氏との共著)にも及んでいます。今後も彼の活動を注視していく必要があります。

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